料金計算ロジックの作り方(動的計算・例外処理)

料金計算ロジックは、Web 上の料金シミュレーターや見積フォーム、管理画面での請求処理など、 多くの BtoB システムの“裏側”で動いている重要なコンポーネントです。 一見シンプルに見えても、「例外対応が増えた結果、ロジックがスパゲッティ化する」という悩みはよく聞かれます。 ここでは、動的計算と例外処理を見据えた料金ロジック設計のポイントを整理します。

この記事の対象読者
・SaaS やクラウドサービスの料金体系を Web 上で表現したい企画・開発担当者
・製造業や物流業で、複雑な単価テーブルをシステム化したい情報システム部門
・既存の料金計算ロジックが属人化しており、整理・可視化したいプロジェクト責任者

1. 料金ロジックは「構成要素の分解」から始める

最初にやるべきことは、料金を構成する要素をできるだけ分解して言語化することです。 典型的には次のような粒度に分けて整理します。

この分解をテキストベースでもよいので一覧にしておくと、 「どの部分を自動計算に含めるか」「どこから先は営業判断とするか」といった線引きがしやすくなります。

2. 動的計算のパターンを決める

Web 上で料金を動的に計算する際は、入力値に応じてどのようにロジックを切り替えるかをあらかじめパターン化しておきます。

2-1. 代表的な動的計算パターン

どのパターンを採用するかは、営業現場で実際にどう見積もっているかとの整合性が重要です。 Web のロジックだけきれいにしても、現場の見積ルールと乖離していると運用できません。

3. 例外処理の設計ルールを最初に決めておく

料金ロジックが複雑になる最大の要因は「例外」です。 例外への向き合い方として、インテンスでは次のような指針で整理するケースが多くあります。

すべての例外をロジックに埋め込もうとすると、コードも設定画面も破綻します。 「一般ルール」「よくある例外」「本当に特殊な個別対応」の三段階に分け、 どこまでをシステムで表現し、どこから先を運用ルールにするかを合意しておくと、後戻りが少なくなります。

4. 管理画面で調整できる範囲を決める

料金ロジックのすべてをコードに埋め込んでしまうと、少しの単価変更のたびに開発が必要になります。 そこで、「どこまでを管理画面から変更できるようにするか」を決めることが重要です。

このあたりを料金テーブルとして管理画面から編集できるようにし、 計算ロジック自体は極力シンプルな式を保つ、という構成にしておくと、 将来の料金改定やキャンペーン時の柔軟性が大きく変わります。

5. 検証しやすい形でロジックを可視化する

料金ロジックは、ブラックボックス化すると必ず現場の不信感を招きます。 テスト・検証しやすいように、次のような形で可視化しておくと安心です。

特に BtoB では、営業・経理・経営層など複数の立場から料金ロジックがチェックされます。 「どの条件でいくらになるのか」を説明できる状態にしておくことが、信頼性確保の近道です。

6. 将来の料金改定・プラン追加を見据えた設計

料金は一度決めたら終わりではなく、市場環境や原価構造の変化に合わせて見直されます。 そのため、最初から「プラン追加」「料金改定」が起こりうる前提でロジックを組むことが重要です。

このような設計にしておくと、「新料金体系への移行期間」と「旧体系のままの既存契約」を並行して扱うことができます。

まとめ

料金計算ロジックは、単なる「数字の掛け算」ではなく、 ビジネスルール・営業現場の運用・将来の料金改定までを含んだ長期的な設計テーマです。 構成要素の分解、動的計算パターンの整理、例外処理の線引き、管理画面で調整できる範囲の決定、 そしてテストしやすい可視化までをセットで考えることで、現場にとって扱いやすい料金ロジックに近づきます。 自社の料金ルールが「頭の中だけ」にある状態から、「誰でも確認できるルール」としてシステムに落とし込んでいくことが重要です。

本記事は、Webシステム開発・スマホ自動変換「movo」・業務システム構築・フォームUX改善・EC支援を提供する 株式会社インテンスが、実際の開発プロジェクトで蓄積した知見をもとにまとめています。 株式会社インテンス(公式サイト)