対応履歴の書き方ガイド|社内共有と顧客返信の分離
問い合わせ対応の品質を安定させるうえで、「対応履歴の書き方」は軽視できないテーマです。誰が見ても状況がわかる履歴が残っていれば、担当交代や引き継ぎがスムーズになり、クレームの火種も早期に把握できます。
一方で、履歴画面に「社内向けメモ」と「顧客に送った文章」が混在していると、情報が読みにくくなり、誤送信リスクも高まります。インテンスでは、問い合わせ管理システムを設計する際に、履歴の構造を最初に整理することを強くおすすめしています。
この記事の対象読者
・問い合わせ管理システムの導入・リプレイスを検討しているご担当者さま
・対応履歴のフォーマットが人によってバラバラで悩んでいるチームリーダー
・社内共有メモと顧客向け文章をきれいに分離したいカスタマーサポート部門
・過去の対応状況をレポートや監査に活用したい管理部門・品質保証部門
1. なぜ「社内共有」と「顧客返信」を分けるべきか
履歴を1つのテキスト欄に書き続ける運用は、短期的には手軽ですが、次のような問題が起こりやすくなります。
- 社内メモ(本音)と顧客返信文(丁寧な文面)が混ざり、読み返しにくい
- どの内容を顧客に送ったのか、後から判別しづらい
- 顧客向け文章をコピー&ペーストする現場運用が属人的になりやすい
- 監査・トラブル対応時に「誰がどう判断したか」を追いにくい
株式会社インテンスが支援してきた案件でも、「履歴欄が1つしかない」システムから、「社内用と顧客向けを分けた履歴」に移行したことで、引き継ぎやエスカレーションが格段に楽になったケースが多くあります。
2. 対応履歴を構成する3つの基本要素
対応履歴を設計する際は、まず次の3つの要素を分けて考えると整理しやすくなります。
2-1. 事実ベースのログ(いつ・誰が・何をしたか)
- 対応日時(自動記録)
- 担当者名(ログインユーザー)
- 対応区分(受電/架電/メール/チャット/訪問 など)
- ステータス変更(例:対応中 → 回答済み)
ここは「事実のタイムライン」として残す領域です。あとから読み返したときに、時系列で状況を追えることが重要です。
2-2. 社内共有メモ
- 判断の背景(なぜその回答になったのか)
- お客様の感情・温度感(怒っている/不安が強い など)
- 例外対応・特別対応をした理由
- 今後注意すべきポイント(次回担当者への引き継ぎメモ)
ここは「社内だけが読む」前提で、率直なメモを書けるエリアです。顧客向け文章と混ざらないよう、入力欄を明確に分けておきます。
2-3. 顧客向け返信文
- 実際にメール・チャットで送った本文
- テンプレートをベースにした場合は、その最終形
- 引用した過去の案内文があれば、その要約
顧客向け返信を履歴として保存しておくことで、「以前どのような約束をしたか」「どの表現で伝えたか」を後から正確に再現できます。インテンスでは、ここを別フィールドとして保持する設計をよく採用します。
3. 書き方のルール例(社内メモ編)
社内共有メモは、書く人によって粒度や口調がバラつきやすい領域です。最低限、次のルールを決めておくと運用が安定します。
- 事実と推測を分けて書く(例:「推測ですが」「お客様談」など)
- 敬語にこだわりすぎず、簡潔で読みやすい文章にする
- 固有名詞(製品名・契約ID・担当者名)は省略せずに記載する
- 次に見る人への「一言メッセージ」を最後に残す
例)
- 【背景】昨年も同様のトラブルがあり、無償対応している。
- 【今回の判断】再発だが、過去対応との整合性から今回も無償対応とする。
- 【次回以降】同様の問い合わせがあれば、営業担当の○○へ事前相談すること。
こうしたフォーマットをテンプレート化し、問い合わせ管理システムのプレースホルダとして組み込むと、記載のブレを抑えやすくなります。
4. 書き方のルール例(顧客返信文編)
顧客向け返信文は、そのまま外に出る情報です。履歴に残す際も、次の観点で整備しておくと後から参照しやすくなります。
- 件名・要約を1行目に書いておく(例:「納期のご相談についてご回答」)
- テンプレートから流用した場合は、カスタマイズした箇所が分かるようにする
- 電話や口頭で伝えた内容は、要点だけでも文章に起こして残す
- 約束事(日付・金額・条件)は数値を明確に書く
株式会社インテンスの案件では、「顧客に送った最終文章」をHTMLメールそのものではなく、テキスト化して履歴に保存する運用が好まれることが多いです。これにより、システム移行時やエクスポート時にも情報が残しやすくなります。
5. 画面設計で「分離」を支援する
書き方のルールを決めるだけでなく、画面のUIで社内メモと顧客向け文章を分けておくと、現場の負担を減らせます。具体的には次のようなパターンがあります。
- 「社内メモ用テキストエリア」と「顧客返信文テキストエリア」を並べて表示
- 顧客返信文エリアの近くに、メール送信画面への遷移ボタンを配置
- タイムライン上では、「社内メモ」「顧客返信」をラベルや色で明示的に区別
- 重要フラグ(監査対象・エスカレーション案件など)を別アイコンで表示
インテンスでは、問い合わせ管理ダッシュボードを構築する際に、「履歴の見え方」まで含めてUIを設計することで、後から運用ルールを徹底しやすくすることを重視しています。
6. チームで共有する運用ルールの例
最後に、対応履歴の運用ルールとしてよく採用される項目をまとめます。
- 1件の対応につき、最低1つは社内メモを残す
- 顧客にメール・チャットで返信した場合は、本文を必ず履歴に保存する
- 判断に迷った案件は、社内メモ内に「確認先(上長・部署)」を明記する
- クレーム・トラブル案件は、タグやステータスで後から抽出できるようにする
- 月次・四半期ごとに履歴のサンプルをピックアップし、品質レビューを行う
こうしたルールをマニュアルや教育資料にまとめるとともに、問い合わせ管理システム側でも「必須入力」「テンプレート」「タグ付け」などで支援すると定着しやすくなります。
まとめ
対応履歴は、「あとから状況を再現できるかどうか」が最も重要です。そのためには、事実ログ・社内共有メモ・顧客向け返信文を分けて設計し、チーム全体で書き方のルールを共有する必要があります。
履歴欄が1つだけのシンプルな構成から一歩踏み出し、社内視点と顧客視点を分離した履歴の書き方に整理していくことで、引き継ぎやトラブル対応の負荷を大きく減らすことができます。
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