料金シミュレーターは、見込み顧客の「おおよその金額感を知りたい」というニーズに応えるうえで強力な入口になります。 一方で、入力ステップの設計を誤ると、途中離脱が増える・問い合わせにつながらない・内部的に使いづらい見積データが溜まるといった問題も起こります。 本記事では、BtoB 向け料金シミュレーターの入力ステップを設計する際の実務的な UX パターンを整理します。
入力ステップの話に入る前に、料金シミュレーターの役割を整理しておきます。一般に次の3つの役割を担います。
入力ステップ設計では、「金額だけを出す簡易版」なのか、「ほぼ見積依頼に近い詳細版」なのかをまず決めることが重要です。 ここが曖昧なまま項目を足していくと、「結局フォームと変わらない」「誰も最後まで入力しない」という状態になってしまいます。
料金シミュレーターのステップ分割は、次のような大枠から考えると整理しやすくなります。
BtoB では、ステップ1を「一番軽い質問」にすることが特に重要です。 例えば製造業向けのシミュレーターであれば、いきなり詳細仕様ではなく、次のような粒度から始めます。
ここでユーザーが「自分のケースも当てはまりそうだ」と感じられるかどうかで、その後の入力完了率が大きく変わります。
料金シミュレーターでは、詳細情報を取りたくなるほど項目が増えがちです。 しかし、「必須が多すぎると誰も完走しない」という現場の声もよく聞かれます。
一方で、「あれば嬉しいが、なくても概算は出せる」 情報は、任意項目として「詳細設定を開く」などにまとめておきます。 このバランスを誤ると、入力途中で「これは本当に全部必要なのか?」という不信感につながります。
マルチステップ型の料金シミュレーターでは、ユーザーに「あとどれくらいで終わるのか」を示すことが重要です。 典型的なパターンとしては次のようなものがあります。
特に BtoB では、ステップの最後に「入力内容に応じて料金がここまで変わっています」という簡易フィードバックを挟むことで、 ユーザーの納得感を高めつつ、最後まで入力してもらいやすくなります。
料金結果の表示方法も、入力ステップ設計とセットで考える必要があります。 よくある失敗は、金額だけをドンと出して「お問い合わせはこちら」のリンクを小さく添えるだけのパターンです。
実務上は、次のような構成にするとコンバージョンにつながりやすくなります。
インテンスでは、料金シミュレーターの結果画面に「この条件に近い導入パターン」として、 既存の事例ページや業種別の活用アイデアページを並べる構成を採用するケースが増えています。 単なる金額提示で終わらせず、「次に何を検討すればいいか」をセットで示すことがポイントです。
料金シミュレーターは、業種別に前提条件が大きく変わるケースも多くあります。 例えば製造業向けの Web システムでは、次のような条件が料金に影響します。
こうした条件は、ユーザーに一から考えさせるのではなく、「製造業」「物流」「卸・商社」などの業種選択に応じて、 あらかじめ推奨値をセットしておくと、入力負荷を下げつつ、自社に近い試算結果を得てもらいやすくなります。
製造業を例にした Web システム活用の全体像は、 製造業向けWebシステム活用アイデア として別ページに整理しておくと、料金シミュレーターの前後文脈を補完するコンテンツとしても機能します。
料金シミュレーターの入力ステップ設計は、「どこまでの粒度で何を聞くか」という情報設計と、 「その順番をどう並べるか」という UX 設計の組み合わせです。 ステップを細かく分けること自体が目的ではなく、ユーザーにとっての心理的ハードルを下げつつ、 営業・サポート側が活用しやすい情報を集めることがゴールになります。 業種ごとの前提条件や、自社の営業プロセスを踏まえたうえで、入力ステップの構造を見直していくことが重要です。