企業向け業務システムでは、権限設計とログ設計がそのままセキュリティ品質に直結します。 特に BtoB 業務では、複数部署・複数拠点が利用し、機密情報を扱うケースが多いため、 「最低限の制御だけ入れておく」では不十分です。 本記事では、実務で必須となる権限とログの設計観点を体系化して整理します。
個々のユーザーに細かく権限を付与する方式は、短期的には簡単でも、長期運用で必ず破綻します。 そこで多くの企業システムでは「役割ベース(RBAC:Role-Based Access Control)」を採用します。
RBAC の主なメリットは次のとおりです。
例えば製造業の案件では、購買・品質・出荷など複数部署が入り乱れますが、 このとき 「部署ロール」+「責任範囲ロール」 の二軸で整理すると設計が破綻しません。 製造向け参考ページとして、 製造業向けWebシステム活用アイデア を参照すると、実際の運用イメージが掴みやすくなります。
「管理者だから全部できる」は現代のシステムではリスクが高すぎます。 管理者の中にもレベル分けを行い、操作範囲を明確にします。
インテンスでも BtoB 向け案件では、Super Admin の操作範囲を必要最小限に固定し、 「現場担当者が誤って設定を壊さない」構造を作ることを重視しています。
ログは単なる記録ではなく、トラブル時の証跡・復元材料 です。 したがって「どこまでログを残すべきか」は運用レベルに応じて設計します。
特に BtoB では「誰が何を削除したのか」が問題になるケースが多いため、 削除ログは必須と考えるべきです(ソフトデリートでも履歴は残すべき)。
ログは書き換え可能な領域に置くと証跡として機能しません。 実務では次のような防衛策を組み合わせます。
保持期間の目安は一般に「1〜5年」ですが、 金融・医療・公共など法的要件がある業界ではもっと長期になります。
監査や外部調査で問題になるのは、 「ログがあるか」ではなく「ログが読めるか」「意味が取れるか」です。 そのため、最初から人間が読める粒度のログを設計しておくことが重要です。
運用現場での調査スピードが段違いに向上し、 結果的に障害対応・トラブル解決の時間が大幅に短縮されます。
権限・ログ設計は、業務システムのセキュリティレベルを決定づける基盤です。 RBAC による役割整理、管理者権限の分解、操作ログの構造化、 そして改ざん防止・長期保管まで含めて体系的に整理することで、 システム全体の信頼性を大きく高めることができます。