規格認証(UL/CE/RoHS等)の証跡管理ポータル設計|提出物・改定履歴・担当分担
規格認証の実務が重くなる理由は、規格そのものより、証跡が散らばることにあります。
提出物がメールに埋もれる/最新版が分からない/どのRevで通したか曖昧──この状態だと、監査や再認証で必ず詰まります。
ここでは、認証対応を「止めない」ための証跡管理ポータルの設計ポイントを整理します。
1. まず整理する:規格ごとの“提出物セット”という考え方
規格対応は、個別ファイルを追いかけると破綻します。
そこで、規格ごとに「提出物セット(パッケージ)」を定義し、セット単位で管理します。
- 規格(UL/CE/RoHS/医療/食品接触など)
- 対象製品(品番・型式/図番・Rev)
- 提出物(レポート、図面、BOM、材料証明、宣言書、校正証明など)
- 提出先(認証機関、顧客、代理店)
- 提出日/期限/担当
“規格”をタグで済ませない
「UL」タグだけでは、どの規格条項・どの構成で通したかが残りません。
最低でも「規格名+版(改定年)+カテゴリ(安全/EMC/環境)」くらいは持てると後が楽です。
2. 画面構成のおすすめ:3つの台帳で回す
2-1. 製品×規格の台帳(全体の背骨)
- 製品(品番・型式)
- 対象市場(国内/EU/北米など)
- 適用規格(版・条項の要点)
- ステータス(準備中/提出中/承認済/更新要)
2-2. 提出パッケージ台帳(提出単位で追える)
- パッケージID(SUB-YYYYMM-XXX)
- 提出先/期限/担当
- 含まれる成果物一覧(チェックリスト化)
2-3. 成果物(証跡)台帳(ファイルの“意味”を持たせる)
- 成果物ID/種別(試験レポート、宣言書、材料証明など)
- 対象Rev(どのRevの証跡か)
- 有効期限(必要な場合)
- 公開範囲(社内/顧客/代理店/認証機関)
※ “成果物台帳”があると、試験結果の整理と同じく「探せる」状態になります。
3. 改定履歴の落とし穴:規格改定と製品改版を混ぜない
現場で混ざりやすいのが、規格側の改定(版)と、製品側の改版(Rev)です。
両者を分けて持つだけで、再認証時の混乱が激減します。
- 規格の版:規格文書がいつ改定されたか
- 製品のRev:図番・設計・BOMがいつ変わったか
- 提出パッケージ:「どの規格版 × どの製品Rev」で通したか
“どの版で通したか”が説明できるのが勝ち
監査で問われるのは、ファイルの在処ではなく、整合性(いつ、何を根拠に、どう判断したか)です。
4. 社内の担当分担:品質保証・規格認証・設計・購買が交差する
認証対応は、単一チームでは完結しません。典型的には次の役割が交差します。
- 規格認証:提出要件の取りまとめ、認証機関窓口
- 品質保証:証跡の妥当性、逸脱・特採の扱い
- 設計:図面・BOM・仕様の確定、変更管理
- 購買:材料証明、サプライヤ提出物(CoC等)
この構図だと、権限とログが重要になります。誰がいつ更新したかを残す考え方は 権限・ログ設計 の延長です。
5. 外部共有を想定する:代理店・販売店・認証機関への見せ方
証跡は、外部に見せる前提があると設計が変わります。
“同じページ”で出し分けるより、公開用ビュー(読み取り専用)を作る方が運用が安定します。
- 外部公開ビュー:必要最小限(最新版の宣言書、認証書、適用範囲)
- 社内詳細:試験ログ、未確定資料、差し戻し履歴、内部メモ
外部配布の入口が必要なら、代理店向けの情報整理という文脈で 製造業向けシステム開発例 の「専用情報ページ」系の考え方と相性が良いです。
まとめ
規格認証の証跡管理は、ファイル保管ではなく「提出物セット」「成果物の意味付け」「規格版と製品Revの分離」が要点です。
ポータルで一元化し、担当分担・ログ・外部公開ビューまで整えると、監査や再認証の“急な呼び出し”に耐えられる運用になります。
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