問い合わせ管理ダッシュボード設計ガイド|ステータス・担当・優先度を一画面で把握する
問い合わせフォームや資料請求、見積依頼、イベント申込など、窓口が増えるほど「すべての問い合わせを一元管理したい」というニーズが高まります。本記事では、業界を問わず使える「問い合わせ管理ダッシュボード」の設計ポイントを、カラム設計・画面レイアウト・フィルタ・通知・権限といった観点から整理します。
この記事の対象読者
・問い合わせ対応をメールボックスやExcelで運用しており、限界を感じている担当者
・部署横断で問い合わせ状況を見える化したい企業
・将来的にCRMやSFAと連携できる“土台となるダッシュボード”を整えたい情報システム・Web担当
問い合わせ管理ダッシュボードの役割
ダッシュボードの役割は「すべての問い合わせを一元的に把握し、漏れなく・遅れなく・担当者を決めて処理すること」です。具体的には次の3つに分解できます。
- 1. 受付状況の見える化:いま何件の問い合わせがあり、どのステータスで止まっているか
- 2. 担当者・部門への振り分け:誰が、どの案件を対応しているのか
- 3. 業務改善のための集計:件数推移・カテゴリ別件数・対応時間などの分析
この3つを満たすために、一覧画面のカラムやフィルタ機能を設計していきます。
必須カラムの設計
1. 一覧画面に置くべき基本カラム
まずは、どの業界でも共通で使える「最小限のカラム」を整理します。
- 受付日時
- 問い合わせ者名(会社名+氏名など)
- 件名または概要
- カテゴリ(資料請求・見積・サポート・苦情など)
- ステータス(未対応/対応中/回答待ち/完了/クローズ不可 など)
- 担当者(または担当部門)
- 優先度(高・中・低)
- 期限(回答目安日・SLA基準日)
これらを「1画面でスクロールせずに確認できる範囲」に収めるのが理想です。詳細なやり取りは、行をクリックして別画面(またはスライドインパネル)で表示します。
2. 業界別に追加されやすいカラム例
- 製造業:製品カテゴリ/型番/シリアル番号
- 医療:施設区分(病院/クリニックなど)/診療科
- 学校:学年/在籍学校/興味のある学科
- ホテル:利用目的(宿泊/宴会/会議/法要など)
これらは「集計に使うかどうか」を基準に採用可否を決めます。
ステータスと優先度の設計
1. ステータスは“流れ”を意識して5〜7段階に
ステータスが細かすぎると運用が煩雑になり、逆に少なすぎると状況が把握しづらくなります。典型的には、次のような流れがベースになります。
- 未対応
- 対応中
- お客様回答待ち
- 完了
- クローズ不可/対応不要(誤送信・スパムなど)
「社内確認中」「開発検討中」など、特定業務でよく発生する状態は、別途ステータスとして増やす場合もあります。
2. 優先度と期限の組み合わせ
優先度(高・中・低)だけでは運用が曖昧になりがちです。実務では、次のような組み合わせ設計が有効です。
- 優先度:高/中/低(主にインシデントの重さ)
- 期限:いつまでに対応すべきか(SLAや社内基準に基づく)
ダッシュボードでは「期限が近い順」「優先度が高い順」でソートできるようにしておくと、毎日の朝会や進捗確認に使いやすくなります。
フィルタ・検索・ソート機能
1. 現場でよく使われるフィルタ軸
問い合わせ管理では、次のようなフィルタが頻繁に使われます。
- ステータス別(未対応のみ/対応中+回答待ちなど)
- 担当者別(自分が担当している案件)
- カテゴリ別(障害/見積/契約/請求など)
- 期間別(今日・今週・今月の受付分)
これらをワンクリックで切り替えられる「保存済みビュー」として用意しておくと、監督者・現場メンバーそれぞれにとって使いやすいダッシュボードになります。
2. 検索とソートの基本
- キーワード検索(会社名・氏名・件名・本文)
- 受付日時の新しい順/古い順
- 期限の近い順
- 優先度の高い順
「検索結果が遅い」「ソートすると画面が固まる」といった状況は、現場で嫌われやすいため、件数制限やページネーションも含めてパフォーマンス設計が重要です。
通知・権限設計のポイント
1. 通知は“誰に・どのタイミングで”送るか
メールやSlackなどへの通知は、次のようなタイミングに絞るとちょうどよく運用できます。
- 新規受付時(カテゴリや重要度に応じて特定チャンネルへ通知)
- 自分に担当アサインされたとき
- 期限切れが近づいたとき
すべての更新を通知すると、すぐにノイズだらけになり、誰も見なくなってしまうため要注意です。
2. 権限レベルの考え方
- 閲覧のみ:全体の状況を確認するだけのメンバー
- 一般ユーザー:自分の担当案件の編集・コメントが可能
- マネージャー:案件の担当変更・ステータス一括更新が可能
- 管理者:カテゴリ・ステータス・ユーザー管理など設定を変更可能
このようにレベル分けしておくと、「誰でもなんでも変えられる」状態を避けつつ、現場の自由度も確保できます。
業種別の典型ユースケース
- 製造業:製品に関する技術問い合わせと見積依頼を同じダッシュボードで管理
- 医療:紹介状・相談・検査予約など複数窓口を1つの画面で把握
- 学校:資料請求・オープンキャンパス・個別相談の導線を統合し、入試広報で活用
- ホテル:宿泊以外の宴会・会議・法要問い合わせを一元的に管理
まとめ
問い合わせ管理ダッシュボードは、「カラムの数を増やす」ことではなく、「ステータス・担当者・優先度・期限を一画面で把握できること」が本質です。業界別の条件や集計ニーズを踏まえながら、共通の軸を設計しておくことで、今後のフォーム追加やシステム連携にも耐えられる“土台”になります。
本記事は、Webシステム開発・スマホ自動変換「movo」・業務システム構築・フォームUX改善・EC支援を提供する
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