卸売・商社の受注ステータス設計|分納・直送・バックオーダーを“同じ受注”で破綻させない

卸売・商社の受注管理が崩れる典型は、「受注=1件=1回で出荷・請求が終わる」という前提でシステムを作ってしまうことです。 実際は、分納(部分出荷)直送(メーカー直送)取り寄せメーカー回答待ちバックオーダー(欠品繰越)が混在します。 この混在を“受注のステータス”だけで表現しようとすると、どこかで破綻します。

この記事の対象読者
・商社/卸売で「受注はあるのに状況が追えない」状態になっている方
・分納・直送が増え、請求や納期回答が混線している方
・営業・受発注・倉庫・経理の連携を、システムで整理したい方

1. 粒度を分ける:受注・明細・出荷・請求は別エンティティ

卸売の設計では、最低でも次の粒度を分けて考えると破綻しにくいです。

この「粒度を分ける」発想は、問い合わせ管理で「案件」と「履歴」を分けるのと近いです。一覧の見せ方や保存ビューの考え方は 保存ビュー・フィルタ設計 が参考になります。

2. 受注ヘッダのステータスは“全体の顔”に徹する

受注ヘッダに細かい工程を入れすぎると、更新されなくなります。 ヘッダのステータスは、全体の顔として「今この受注はどこで止まっているか」を示す程度に絞るのが現実的です。

2-1. ヘッダの最小ステータス例

ステータスを増やしすぎないルール作りは ステータス運用の決め方 が土台になります。期限や優先度が絡む場合は 期限・優先度の運用 とセットで決めると、現場が回りやすいです。

3. 受注明細のステータスは“調達方法”で枝分かれさせる

明細は、調達方法(在庫/取り寄せ/直送)で実務が変わります。 ここを一つのステータス列で表現しようとすると、例外だらけになります。まずは明細に「調達区分」を持たせ、その区分ごとに必要な状態を持ちます。

調達区分 代表的な状態 詰まりポイント
在庫出荷 引当済→出荷待ち→出荷済 引当の優先順位、欠品
取り寄せ 発注済→メーカー回答待ち→入荷待ち→出荷 納期回答、部分入荷
直送 直送依頼→出荷連絡待ち→直送完了 メーカー側の出荷情報の遅れ

「回答待ち」「入荷待ち」のような“待ち”を明確にするのが、実務の渋滞を減らします。待ちの扱いは、問い合わせ管理の視点で ステータス設計の実例 も参考になります。

4. 分納とバックオーダー:数量を“割る”前提をシステムに入れる

分納や欠品繰越が起きると、数量が割れます。 ここで「明細数量=出荷数量」としてしまうと、履歴が追えません。おすすめは、明細に「受注数量」と「残数量」を持ち、出荷(ロット)を積み上げて残数量を減らす方式です。

残数量がある案件だけを追い込みたい場合、一覧のフィルタが命です。フィルタ設計の考え方は ビュー・フィルタ設計 を土台にすると、現場の“探す時間”が減ります。

5. 担当割当:営業・受発注・倉庫・経理で“責任の持ち方”が違う

卸売では、誰が最終責任を持つかが工程で変わります。 「受注担当=営業」だけにすると、受発注担当や倉庫が動けません。 逆に「全部受発注担当」にすると、顧客調整(納期交渉)が回りません。 現実的には、責任を段階で移譲する設計が合います。

割当の基本ロジック(自動候補+手動確定)を作るなら 担当者割当ロジック が土台になります。 また、振り分け条件(エリア・取引先・商品カテゴリ)を固めるなら 振り分けルールの決め方 が役立ちます。

6. 顧客向けの納期回答:フォーム・テンプレを整えて“往復”を減らす

卸売の実務負荷の多くは、納期回答の往復です。 受注段階で必要条件(納入先、時間指定、直送可否など)が揃っていないと、納期回答ができません。 見積や問い合わせの入力設計としては BtoBフォームの入力項目チューニング の考え方で、「納期回答に必要な最小セット」を先に揃えると、往復が減ります。

卸売・商社の全体像(見積→受注→出荷→請求)を俯瞰するなら、卸売・商社(BtoB企業)向け を入口に整理すると、ステータス設計が“ただのラベル付け”で終わらず、部門間の役割分担まで固まります。

まとめ

卸売・商社の受注管理は、分納・直送・バックオーダーが混在するため、受注ヘッダだけで表現すると破綻します。 受注・明細・出荷・請求の粒度を分け、ヘッダは最小ステータス、明細は調達区分ごとの“待ち”を表現する。数量が割れる前提で出荷ロットを積み上げ、担当割当を段階移譲にすると、迷子と放置が減ります。

本記事は、Webシステム開発・スマホ自動変換「movo」・業務システム構築・フォームUX改善・EC支援を提供する 株式会社インテンスが、実際の開発プロジェクトで蓄積した知見をもとにまとめています。 株式会社インテンス(公式サイト)