試験計画(DVP&R)を迷子にしない管理設計|要求→試験→判定の紐づけ

製品開発が進むほど、試験の数は指数的に増えます。ところが、試験結果が散らばったままだと、最後に必ず同じ壁に当たります。
「この要求は、どの試験で満たした?」/「この結果は、どのRevの評価?」/「提出用の証跡はどれ?」
DVP&R(Design Verification Plan & Report)は、計画表を作ることが目的ではなく、要求・仕様・試験・結果をつないで“説明できる状態”を作るのが本質です。

関連トピックス
・試験結果を「あとから探せる形」にする:評価データ・試験結果の整理
・不具合が絡む場合の入口:不具合受付(RMA)フォーム
・技術資料や仕様書の配布設計:技術資料DLのゲート設計

1. まず“紐づけの単位”を決める:要求ID/試験ID/成果物

DVP&Rが破綻する原因の多くは、紐づけの単位が曖昧なまま運用が始まることです。
最低限、次の3つのID(またはキー)を固定します。

要求IDが無い場合の現実解
要求書が“文章の塊”になっている現場では、章番号+通し(例:S3-REQ-07)を暫定採番するだけでも効果があります。
後から整備する前提で、まず「紐づけできる場所」を作るのが先です。

2. 画面(台帳)の見え方:DVP&Rを“表”として持つときの列設計

Excelで慣れている現場ほど、Webに移すなら“同じ見え方”から入ったほうが理解コストが下がります。
その上で、Webならではの強み(リンク、履歴、検索、添付の整列)を足していきます。

2-1. 最低限の列(まずはここまで)

2-2. “あとで効く”列(本格運用で差が出る)

※ このあたりは、品質クレーム系の設計思想(“原因・対策・再発防止の紐づけ”)と近いので、品質クレーム管理の設計例 の考え方も流用できます。

3. “Rev地獄”を避ける:図番Revと結果を自動でズラさない仕組み

DVP&Rで最も痛い事故は、古いRevの結果を最新版に転用してしまうことです。
対策はシンプルで、試験IDに「評価対象Rev」を固定し、後から書き換えられないようにします。

“影響洗い出し”の見せ方
ECO登録 → 対象品番/図番を選ぶ → 紐づく試験IDと判定が出る、という導線にすると、会議の準備が早くなります。

4. 提出物が絡む場合:証跡セット(提出パッケージ)の管理

顧客や認証機関に提出する場合、個別ファイルではなく“セット”で管理した方が事故が減ります。
例:提出レポート、測定ログ、校正証明、写真、手順書、逸脱説明書(必要時)など。

技術資料の扱いに近いので、公開範囲やゲートの設計は 技術資料DLのゲート設計 を土台にすると整理が早いです。

5. 運用の現実:入力負荷を増やさずに“正確性”を上げるコツ

入力が面倒だと、DVP&Rは必ず形骸化します。
そこで、入力を増やす代わりに、選択肢化と自動補完で正確性を上げます。

インテンスでも、試験台帳のWeb化は「入力を増やす」方向に行くと失敗しやすいので、まずは“揃えるだけ”から始める設計を採ることが多いです。
製造業の活用イメージとしては 製造業向けシステム開発例 の考え方とも相性が良いです。

まとめ

DVP&Rを“作る”のではなく、“説明できる状態を維持する”ためには、要求ID・試験ID・成果物を一貫して紐づけ、Revをズラさない仕組みを先に作るのが要点です。
そのうえで提出パッケージ、逸脱、関連不具合までつながると、会議や監査の準備が劇的に短くなります。

本記事は、Webシステム開発・スマホ自動変換「movo」・業務システム構築・フォームUX改善・EC支援を提供する 株式会社インテンスが、実際の開発プロジェクトで蓄積した知見をもとにまとめています。 株式会社インテンス(公式サイト)