原因・対策・再発防止を一元管理する品質クレーム管理システムの設計例

品質クレーム(市場不具合/顧客クレーム)は、暫定対応(Containment)→原因解析(Root Cause)→恒久対策(Corrective Action)→再発防止(Preventive Action)が別々に管理されると、結局“同じ形の再発”が起きます。
メール、Excel、共有フォルダで回し続けるほど、証跡が散り、担当者依存が強くなります。

この記事のゴール
・クレーム1件を「8D/CAPAの鎖」で追えるようにする
・ロット影響、是正処置、顧客連絡、承認、証跡が切れない設計にする
・経営報告・品質会議につながる集計(統計ダッシュボード)まで見据える

1. クレーム管理の基本思想:チケットではなく「是正処置レコード」

問い合わせチケットの延長で作ると、クレームは破綻します。理由は、クレームは「原因」「再発防止」「影響範囲」「顧客説明」までが必須だからです。
入口(受付)の設計は 不具合受付(RMA)フォーム設計 を土台にしつつ、クレーム特有の項目を追加します。

2. ステータス設計:8D/CAPAの“段階”をそのまま状態にする

「対応中」という一言だと、どこで詰まっているのかが分かりません。
ステータスは ステータス設計の実例 の考え方で、段階を分け、遷移条件を決めます。

“効果確認”を独立させる
恒久対策を打って終わりにすると、同じ原因が別の形で戻ります。
効果確認は「いつ、何を以ってOKとするか」を定義し、期限を持たせます。

3. 原因解析の欄は「根拠リンク」を持てる形にする

原因解析は文章だけだと説得力が弱く、引き継ぎも崩れます。
評価・試験結果を“あとから探せる形”で整理して紐づけると、証跡として強くなります(評価データ整理)。
試作・評価依頼が発生する場合は、案件一覧で見える化(試作・評価の見える化)までつなげると運用が安定します。

原因解析:推定/確定の区別を持つ
・仮説:Aが原因の可能性(根拠:再現試験T-2025-xxx)
・確定:Bが直接原因(根拠:分解写真/測定ログ/工程データ)

4. 影響範囲:ロット・製番・出荷先を“引ける”形で持つ

クレームで最も重要なのは影響範囲です。
「該当ロットはどれか」「どこへ出荷したか」「同一工程・同一部品の他品番に波及するか」を素早く引けないと、暫定対応が遅れます。
ここは、品目マスタ/BOM/出荷情報のつながり(ECO×BOM×評価のトレーサビリティ)を前提に設計します。

5. 対策と承認:誰が“出荷再開OK”を出すかを決める

対策は、技術的妥当性だけでなく、品質・製造・営業への説明責任が絡みます。
承認フローは 承認フロー設計 を土台に、少なくとも以下を分けると事故が減ります。

6. 外部に見せる情報は“別ビュー”に切り出す

顧客・営業に見せる情報と、社内の原因解析(仮説含む)を同じ画面にすると危険です。
社内の心理的安全性も下がります。
よって、外部提示用の品質情報ビューは別設計にします(顧客・営業向け品質情報ビュー)。

7. 集計に耐える「分類・タグ」:改善施策へつなげる

クレーム管理は、個別対応で終わらせると組織が強くなりません。
原因カテゴリ、工程、供給者、現象タグなどを揃えると、ダッシュボードで傾向が出せます(品質会議用ダッシュボード)。
タグの設計思想は タグをレポート・改善施策に活かす が参考になります。

業種別の具体例:自動車販売・整備・タイヤショップにも効く

クレーム管理は製造業だけの話ではありません。たとえばタイヤショップでも、
・取付後の振動/異音(現象)
・車種・型式・装着条件(再現条件)
・測定値(バランス、アライメント、偏摩耗状態)
・再作業・再発防止(作業標準の改訂)
を一元管理できると、店頭対応と再発防止が安定します。
インテンスでも、製造業の品質管理と同じ思想で、現場運用に合わせた設計を組み立てます。

まとめ

品質クレーム管理は、暫定対応→原因解析→恒久対策→再発防止の鎖を切らないことが核心です。
ステータスを段階化し、影響範囲を引ける形で持ち、評価データ・承認・証跡をリンクで残す。
さらに、外部提示用ビューと集計用ダッシュボードまで見据えると、単発対応ではなく組織学習につながります。

本記事は、Webシステム開発・スマホ自動変換「movo」・業務システム構築・フォームUX改善・EC支援を提供する 株式会社インテンスが、実際の開発プロジェクトで蓄積した知見をもとにまとめています。 株式会社インテンス(公式サイト)