不具合再現(再現試験)を早く回す情報テンプレート|環境・条件・ログの揃え方
不具合解析で一番時間を食うのは、実は技術力そのものではなく、再現条件が揃わないことです。
「こちらでは再現しない」「現場の状況が分からない」「ログが足りない」──この往復が増えるほど、解析は遅れ、現場も疲弊します。
ここでは、再現試験を早く回すために、受付段階で揃えておくべき情報テンプレートを整理します。
1. 再現試験が詰まる“典型パターン”を先に潰す
再現が詰まる理由は、だいたい次のどれかです。技術議論に入る前に、情報欠落を潰す設計にします。
- 対象個体が特定できない:品番・型式はあるが、ロット/製番が不明
- 使用条件が曖昧:温度・湿度・負荷・電源・相手機器が分からない
- 再現手順が足りない:「こう操作したら起きた」だけで、前後の状態が不明
- ログが揃っていない:必要な期間・レベル・フォーマットが不明
- 発生頻度が分からない:毎回か、たまにか、何回に1回か
2. 受付フォーム(またはヒアリング票)の“最小テンプレ”
入力項目は増やしすぎると嫌われます。そこで「解析に必須の核」だけ先に揃えます。
BtoBの不具合受付なら、最初の段階でここまで揃うと再現が早いです。
2-1. 対象特定(誰の何か)
- 品番・型式/図番・Rev
- ロット/製番(シリアル)
- 納入先(拠点/ライン/装置名)
- 導入日・稼働時間(おおよそでも可)
2-2. 発生状況(いつ・どのくらい)
- 発生日・発生頻度(毎回/断続/初回)
- 発生タイミング(起動時/負荷変動時/停止直前など)
- 発生前後の状態(正常→異常の変化点)
2-3. 使用環境(再現条件の骨格)
- 温度・湿度・設置条件(屋外/屋内、換気、粉塵など)
- 電源条件(電圧、瞬断、ノイズ、UPS有無)
- 相手機器(PLC/インバータ/センサー等の型式、FW)
“相手機器”が抜けると再現が止まる
現場側は「自社装置の不具合」と捉えがちですが、実際は相手機器の設定やFW差分で挙動が変わることが多いです。
型式・FW・設定ファイル(可能なら)までが取れると一気に早くなります。
3. 手順は“操作の列挙”ではなく「前提→操作→期待→実際」で書かせる
「こうしたら起きた」だけだと、前提がズレて再現しません。
テンプレとして、次の4点で書かせると、再現性が上がります。
- 前提:装置の状態(起動直後/安定運転中)、設定、接続
- 操作:何をどの順番で、どの値にしたか
- 期待:本来こうなるはず(正常挙動)
- 実際:何が起きたか(エラーコード、表示、波形)
※ 可能なら、操作の“動画”が強いです。写真・動画の添付設計は、一般の添付設計と同様に、容量・拡張子・公開範囲まで決めておくと事故が減ります。
4. ログの揃え方:必須ログを“選べる”ようにしておく
ログは「とりあえず全部ください」だと、現場が疲れます。
逆に、必要なログが欠けると解析が止まります。
現実的には、ログ種別を選択肢化して、必要なものだけ取れるようにします。
- イベントログ(時系列、エラーコード)
- 通信ログ(プロトコル、タイムアウト)
- センサ値ログ(アナログ値、閾値越え)
- 操作ログ(オペレータの操作履歴)
- 環境ログ(温度、電源、振動)
ログの“期間”を先に指定する
「発生直前10分〜発生後5分」「発生日の0:00〜24:00」など、期間を指定できるUIにすると、データ量が現実的になります。
5. 受付→解析→対策の流れを“ステータス”で破綻させない
再現試験は、担当が複数に跨ります(現場、営業、品質、設計、評価)。
ここでステータスが曖昧だと、誰がボールを持っているのか分からなくなります。
ステータス設計は、一般の問い合わせ管理と同じく、ステータス運用ルールの考え方がそのまま使えます。
- 受付(情報不足の場合は「追加情報待ち」へ)
- 再現準備(試験計画・設備手配)
- 再現中(ログ取得・条件調整)
- 原因仮説(切り分け)
- 対策案(暫定/恒久)
- 再発防止(水平展開)
インテンスでも、現場が疲れない不具合受付の設計は「追加情報待ち」を強くし、往復回数を減らす方向で組み立てることが多いです。
製造業の文脈での全体像は 製造業向けシステム開発例 が近いイメージです。
まとめ
再現試験を早く回す鍵は、技術論に入る前の“情報の揃え方”にあります。品番・ロット、環境条件、再現手順、必要ログをテンプレ化し、追加情報待ちを減らすだけで、解析のスピードは大きく変わります。
入口(RMA)から対策・再発防止までを一続きにすると、「同じ往復」を繰り返さない組織になります。
本記事は、Webシステム開発・スマホ自動変換「movo」・業務システム構築・フォームUX改善・EC支援を提供する
株式会社インテンスが、実際の開発プロジェクトで蓄積した知見をもとにまとめています。
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