図面、現場写真、仕様書、見積の添付、車検証の画像、紹介状のPDF――業務システムでファイルアップロードが必要になる場面は増え続けています。
しかしアップロードは、UI/UXだけでなく、セキュリティ・容量・権限・運用の落とし穴が多い領域です。適当に実装すると「重くて送れない」「社内で見れない」「誤って公開された」「削除して揉めた」といった事故が起きます。
本記事では、実務要件から逆算したアップロード設計を整理します。
アップロードを必須にすると、入力が止まります。特にスマホだと顕著です。
必須にする前に、本当に必要な最小セットと、後追い取得で良いものを分けてください。
「必須項目を減らす」ための整理は、情報整理ワークフローと同じ発想で、要件を分解してから決めるとブレにくいです。
スマホ写真は高解像度で、簡単に数MB〜十数MBになります。アップロードは通信環境に左右されるので、次を前提にします。
入力途中で落ちたときの体験は、入力内容保持と同じで「戻っても壊れない」が重要です。アップロードも同じく、一時保存(下書き)を用意できると成功率が上がります。
添付ファイルは、情報漏えいの起点になりやすいです。URLを知っていれば誰でも見れる設計は避け、少なくとも次を満たしてください。
権限設計の基本は ロール×スコープ×例外承認 の考え方で整理できます。
「社外共有はできるが、全社共有はしたくない」といった要件は、ファイル単位の公開範囲がないと必ず揉めます。
ファイル添付では「マクロ付きOffice」や「実行形式」「圧縮ファイル」に絡む事故が起きます。
現実的な方針としては、業務上必要な拡張子をホワイトリスト化し、危険度が高いものは別経路(SaaS共有)に逃がすのが安全です。
フォームの安全性は、スパム対策(reCAPTCHA・ハニーポット・IP制御)と合わせて考えると、入口と添付の両方を守れます。
添付が増えると、社内で「どれが最新?」「どれが図面?」「この写真はどの部位?」が分からなくなります。
ファイルにも最低限のメタ情報を持たせると運用が安定します。
検索性を上げるなら、FAQのキーワード設計(検索性向上のための設計)と同じく、「現場がどう探すか」を先に想定してタグや分類を決めるのが近道です。
添付ファイルは、誤りが見つかったときに「消したい」欲求が強い領域です。
しかし消すと、後から説明できなくなります。安全な型は次です。
この方針は、監査ログの考え方(追記のみで説明責任に耐える設計)と同型です。
アップロードは「便利」より先に「事故の防止」を優先してください。
図面は版管理が必須で、現場写真は量が増えます。見積や現地調査とセットなら、建設・工務店向け の業務像を前提に「図面の版」「写真の部位」「希望工期」などのメタ情報を揃えると、積算が速くなります。
書類の機微情報が混ざるため、公開範囲と期限が特に重要です。業務像は 自動車販売・整備・タイヤショップ向け のように工程で分け、添付の公開範囲も工程(受付/フロント/整備)で分けると事故が減ります。
ファイルアップロードは、UIだけでなく、容量・再試行・公開範囲・期限・メタ情報・削除/差し替え・監査ログまで含めて設計すると、運用で詰まりにくくなります。
必須化しすぎず、探せる形にし、削除ではなく無効化+履歴で説明できる運用に寄せる。これだけで事故と手戻りが大きく減ります。インテンスでも、アップロードは“最後に足す機能”ではなく、業務フローと同時に要件化するのが安全です。