物流の見積フォーム設計|路線便・チャーター・3PLで変わる入力項目と単価条件の揃え方

物流の見積フォームは、他業種の見積フォームと同じ作り方をすると高確率で破綻します。 理由は、見積単価の前提が「距離」だけではなく、運び方(路線便/チャーター/混載)荷姿(パレット/バラ/長尺)容積重量集荷・配送のウィンドウ(時間指定)、さらに付帯作業(荷役・検品・流通加工)で大きく変わるからです。

この記事の対象読者
・物流会社で、見積依頼が来ても情報不足で往復が多い方
・営業が拾ってきた案件を、配車・現場が見積できず止まることが多い方
・路線便/チャーター/3PLの問い合わせが混在し、入力項目が揃わない方

1. まず最初に「サービス形態」を分岐させる(入力項目を共通化しすぎない)

物流の見積で最も危険なのは、全てを一つのフォームで共通化しようとすることです。 共通化すると、路線便ユーザーにチャーター前提の質問が刺さり離脱します。逆に、チャーター案件に路線便レベルの情報しか集まりません。 最初に次のように分岐させるだけで、後工程が一気に楽になります。

分岐の切り方(目的ベースで迷わせない)という意味では、 問い合わせ種別プルダウンの設計パターン の「目的・緊急度で切る」考え方が物流にも有効です。

2. 路線便の見積:容積重量と荷姿の取り方が肝

路線便は「重量」だけで見積が出ると思われがちですが、実務では容積重量(サイズ換算)が刺さります。 そのため、荷姿(段ボール/クレート/パレット)と、三辺サイズ・個数の回収が重要です。

項目 入力例 なぜ必要か
荷姿 段ボール/パレット/長尺 運賃体系・取扱可否に直結
サイズ 縦×横×高さ(cm) 容積重量の算定
重量 kg(総重量/1個あたり) 運賃・荷役条件
発送頻度 毎日/週2/スポット 単価(契約)を決める前提

3. チャーターの見積:車格より先に“時間指定・積付制約”を取る

チャーターは「何トン車ですか?」から入ると失敗しやすいです。 実務で詰まりやすいのは、時間指定、荷待ち、待機、そして積付制約(フォーク可否、パワーゲート、手積み)です。 車格はそれらが確定してから決まることも多いので、まず制約を取ります。

時間枠やウィンドウの入力設計は、予約カレンダーの考え方と近いです。 時間枠設計の実務ガイド を、物流の集荷・納品ウィンドウに置き換えると設計が早いです。

4. 3PL/倉庫の見積:波動(繁閑)と付帯作業を“数量で”聞く

3PLの見積で最も危険なのは、平均値だけを聞いて終わることです。 実務では、繁忙期の波動(例:月末、セール時)で人員・スペースが決まるため、波動を数字で取らないと見積が外れます。

4-1. 波動の回収(例)

4-2. 付帯作業(流通加工)の回収(例)

細かい数値入力が必要な箇所は、範囲指定や段階選択で負担を下げるのが現実的です。 UIとしては 範囲指定UI の考え方が使えます(例:月間出荷「〜500」「〜2000」などの段階化)。

5. 見積を出すまでの運用:ステータスと担当振り分けを先に設計する

物流の見積は、営業だけで完結しません。配車、現場、倉庫管理などが関与し、ボールが移動します。 ここを曖昧にすると「見積が出ない」状態になります。最小でよいので、次を分けます。

振り分けルール(地域、サービス形態、荷主規模)を明確にするなら、 担当振り分けルールの設定方法 と、基礎となる ステータス運用 をセットで設計すると破綻しにくいです。

6. “あとから必要になる情報”は送信後に取りに行く(フォームを重くしない)

物流見積は、最初から全部集めようとすると離脱します。 初回は「サービス形態」「荷姿」「集荷・納品」「頻度」など見積の入口だけ揃え、追加が必要な案件だけ追加入力へ誘導する方が現実的です。

送信後の追加入力・追加質問を自動化する発想は、 追加情報取得オートメーション をそのまま使えます(不足項目を“案件ごとに”出し分けるのがコツです)。

物流の全体像(見積→受注→配車→実績→請求)を俯瞰するなら、 物流向けシステム開発例 を入口に、どこまでWeb化するかを整理すると要件がブレにくいです。

まとめ

物流の見積フォームは、路線便・チャーター・3PLで必要情報が根本的に異なるため、最初にサービス形態で分岐させるのが要点です。 路線便は容積重量と荷姿、チャーターは時間指定と荷役・積付制約、3PLは波動と付帯作業を数量で回収する。 そのうえで、見積までのステータスと担当振り分け、送信後の追加入力を組み合わせると、往復と放置が減り、見積回答が速くなります。

本記事は、Webシステム開発・スマホ自動変換「movo」・業務システム構築・フォームUX改善・EC支援を提供する 株式会社インテンスが、実際の開発プロジェクトで蓄積した知見をもとにまとめています。 株式会社インテンス(公式サイト)