品質会議・経営報告用のクレーム統計ダッシュボード設計
品質会議や経営報告で「今月のクレーム件数は○件でした」だけを見ても、意思決定は進みません。
必要なのは、重大度・再発・影響範囲・収束スピード・工程/供給者の偏りなど、改善につながる切り口です。
この記事では、品質クレーム管理データ(クレーム管理システム)を“判断材料”に変えるダッシュボード設計を整理します。
このダッシュボードが支える判断
・今月の悪化は「件数」か「重大度」か
・再発が増えているのはどの領域か
・クローズが遅い原因はどこか(解析?対策?効果確認?)
・供給者/工程の偏りはあるか(パレート)
・対外説明(
外部ビュー)の整備が追いついているか
1. まずKPIを決める:件数だけではなく“質”と“速度”
品質のダッシュボードでよくある失敗は、カウント指標だけに寄ることです。
最低限、次の3カテゴリでKPIを揃えると、会議が進みやすくなります。
A. 発生(規模)
- クレーム件数(期間別・拠点別・顧客別)
- PPM/DPPM(出荷数量と割って規模感を揃える)
- 重大度(S)×頻度(O)×検出性(D)のようなスコア(FMEA系の考え方を軽量に)
B. 収束(速度)
- 受付→暫定対応までの時間
- 受付→原因確定までの時間
- 受付→クローズ(完了)までの日数(中央値・90%点)
C. 再発(学習)
- 再発率(同原因カテゴリの再発)
- 水平展開の実施率(類似品への適用の有無)
- 効果確認でNGになった割合(対策の質)
これらの指標を成立させるには、クレーム側の分類・タグが揃っている必要があります(タグを改善施策に活かす)。
2. パレート設計:工程・原因・供給者・顧客の“偏り”を可視化する
品質会議で強いのはパレートです。件数だけでなく、重大度スコアや影響台数で重み付けすると、優先順位が決まります。
- 現象カテゴリ別パレート(例:漏れ、割れ、通信エラー)
- 原因カテゴリ別パレート(例:工程条件、部品不良、設計、取付)
- 工程別パレート(どの工程で混入したか)
- 供給者別パレート(SCARが必要な領域)
「分類が揃わない」問題
分類がバラバラだと、パレートは嘘になります。
入力側(クレーム管理)のカテゴリ・タグを軽量でも統一することが前提です(
クレーム管理設計)。
3. ドリルダウン設計:経営には“要約”、現場には“掘れる”
ダッシュボードは、要約だけだと現場が使えず、詳細だけだと経営が見ません。
よって、上は要約、下は掘れる構造が必要です。画面レイアウトは ダッシュボードの画面レイアウト の考え方が使えます。
- 上段:KPIカード(件数、重大度、クローズ日数、再発率)
- 中段:パレート(原因/工程/供給者)
- 下段:一覧(重大度順、遅延順、再発疑い順)
一覧のカラム設計は 一覧カラム設計 を流用し、フィルタは 絞り込み条件設計 を前提にすると破綻しにくいです。
4. スナップショット:過去の報告値が変わると信頼が落ちる
ダッシュボードを運用していると、「先月の数字が後から変わった」が必ず起きます。
原因は、データが更新されるからです(クローズ、再分類、重大度見直しなど)。
経営報告で必要なのは、当時の確定値の保存(スナップショット)です。
- 月次締めの確定値を保存(KPIの固定)
- 修正が出たら“差分”として記録(修正理由も残す)
- 現場用のリアルタイム値とは分けて表示
5. 外部提示ビューとの連動:説明の整備状況もKPIにする
営業や顧客対応が詰まるのは、説明が整っていないときです。
外部提示用ビュー(顧客・営業向け品質情報ビュー)の更新状況を、KPIとして見える化すると、ボトルネックが潰れます。
- 外部ビュー未更新の件数(受付済なのに説明がない)
- 次回連絡予定日を超過している件数
- 提出用資料(編集済み)の有無
6. 権限と監査:経営・品質・製造で“見える範囲”を変える
クレーム統計でも、顧客名や供給者名は見せ方に配慮が必要です。
権限設計は 権限・ログ を前提に、
「誰が何を見られるか」を最初に決めます。インテンスでも、ダッシュボードは“全員に同じ画面”にしない前提で設計します。
まとめ
品質会議・経営報告用ダッシュボードは、件数だけでなく、重大度・速度・再発の3軸でKPIを揃えることが要点です。
パレートで偏りを出し、上は要約・下は掘れる構造にし、月次スナップショットで信頼性を守る。
外部提示ビューの整備状況も含めて可視化すると、品質対応が“組織として改善される状態”になります。
本記事は、Webシステム開発・スマホ自動変換「movo」・業務システム構築・フォームUX改善・EC支援を提供する
株式会社インテンスが、実際の開発プロジェクトで蓄積した知見をもとにまとめています。
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