技術問い合わせをナレッジ化するための最低限の項目設計

技術問い合わせは、対応を終えた瞬間にメール箱へ消えていきがちです。
この状態だと、同じ質問が何度も来る/担当者が変わると知見が消える/不具合解析が遅くなる、といった損失が積み上がります。
ナレッジ化のポイントは「立派なFAQを作る」ことではなく、最低限の項目を揃えて“再現できる形”で残すことです。

この記事で扱う論点
・技術問い合わせの「最低限の項目」テンプレート
・タグ・カテゴリ設計(検索できる形)
・重複問い合わせの束ね方(同じ原因を集約)
・不具合(RMA)や評価結果との紐づけ
・運用ルール(いつナレッジに昇格させるか)

1. まず「再現できる情報」を定義する

ナレッジとして使えるかどうかは、再現性で決まります。
製造業の技術問い合わせテンプレ(型式・ロット・図番の取りこぼし防止)の考え方を、問い合わせ全般に展開すると事故が減ります。

最低限の項目(入力テンプレ)

「現象」と「原因」を混ぜると判断がブレます。
入力は“現象と条件”に寄せ、原因や対策は社内で追記する欄に分けるのが運用上強いです。

2. ナレッジの“回答パート”は型を決める

ナレッジが資産になるのは、回答が構造化されているときです。最低限、次の枠があると再利用しやすいです。

恒久対策が設計変更に繋がる場合は、ECOの版管理(トレーサビリティ設計)と繋ぐと、ナレッジが“履歴”として成立します。

3. タグ・カテゴリ:乱立させず“改善に使える粒度”で

分類は細かすぎると運用が破綻し、粗すぎると検索できません。
カテゴリ(固定)とタグ(柔軟)を分け、タグは改善に使える粒度にします。
タグをレポートに活かす考え方は タグを改善施策に活かす が参考になります。

4. 重複問い合わせを束ねる:個別チケットを“親子”で整理する

同じ原因に対して、表現だけ違う問い合わせが増えます。
ここを束ねないと、ナレッジが散って検索性が落ちます。
方法は、問い合わせ(子)を原因レコード(親)に紐づけるのが実務的です。

この親レコードに、代表的な現象、再現条件の差分、対象範囲(どの版・どのロット)を集約します。
対象範囲は、品目マスタやBOM(基礎データ)と繋ぐと、影響範囲の判断が速くなります。

5. 評価・試験結果とつなぐ:ナレッジの裏付けが強くなる

問い合わせの一次回答は、経験則だけだと属人化します。
評価・試験結果(あとから探せる形)にリンクできると、根拠が残り、社内外の説明責任が上がります。
試作・評価依頼(案件一覧で見える化)が起点なら、問い合わせ→評価→結果→恒久対策まで一本道にできます。

6. 運用ルール:いつ“ナレッジ化”するかを決める

全問い合わせをナレッジ化すると運用が死にます。
以下の条件を満たすものだけを昇格させる、という基準が必要です。

権限と監査ログ(権限・ログ)を伴うため、最初に閲覧範囲を決めます。インテンスでも、ナレッジは“全公開”ではなく、部門別に運用できる設計に寄せます。

まとめ

技術問い合わせを資産にするには、最低限の項目で“再現できる形”を作ることが第一です。
対象・版・ロット・現象・再現条件・添付を揃え、回答は一次回答/原因/恒久対策で構造化する。
タグは改善に使える粒度で、重複は束ね、評価結果や設変と紐づけるとナレッジとして回り始めます。

本記事は、Webシステム開発・スマホ自動変換「movo」・業務システム構築・フォームUX改善・EC支援を提供する 株式会社インテンスが、実際の開発プロジェクトで蓄積した知見をもとにまとめています。 株式会社インテンス(公式サイト)