ファイル添付の設計|写真・PDF・図面アップロードを安全に運用する実務ポイント

見積依頼、現地調査、技術問い合わせ、入庫予約、物件資料の送付など、フォームや管理画面に「ファイル添付」はほぼ必須になってきています。
ただし、添付機能は“入れれば便利”な一方で、容量・形式・閲覧権限・ウイルス・誤送信などの事故ポイントが一気に増えます。
この記事では、添付を運用に耐える形にするための設計要点を、実務の順序で整理します。

この記事で扱う論点
・許可する形式と容量(なぜ制限が必要か)
・命名・分類・紐づけ(探せない添付を作らない)
・保存方式(DBに入れない/直リンクしない)
・権限と共有(社内/取引先/顧客で見える範囲を分ける)
・ウイルス/危険ファイル対策と、保管期限(残しすぎない)

1. まず「添付が必要な理由」を言語化する

添付は“便利だから”で入れると、後から破綻しやすいです。
最初に、添付の役割を次のどれか(複数でも可)に限定します。

例えば建設・工務店の見積/現調では図面が重要で、図面アップロード設計 とセットで考えます。
製造業の不具合受付(RMA)なら、不具合受付フォーム の「使用条件・添付を揃える」思想がそのまま効きます。

2. 形式・容量の設計:現場に必要な“最低限”に寄せる

無制限は事故の入口です。運用負荷とリスクが跳ねます。
まずは「写真」「PDF」「図面」の3系統で考えると整理しやすいです。

よくある現実解
・写真:1枚あたり上限、合計上限(例:最大10枚/合計30MBなど)
・PDF:単体上限(例:20MB)
・図面:まずPDFで受け、CADは「別途送付」導線に逃がす
※上限値は業務次第ですが、無制限にしないことが最重要です。

容量制限は「弾くため」ではなく「詰まらせないため」です。
アップロードが重いと離脱(離脱率低減)にも直撃します。

3. 添付の“意味付け”を必ず持たせる(探せない添付を作らない)

添付が増えると、管理画面で「どれが何の資料か分からない」問題が必ず起きます。
そこで、添付には“カテゴリ(用途)”を持たせます(選択式推奨)。

この“意味付け”は、カラム設計(一覧カラム設計)にも直結します。
添付がある案件だけを抽出したい、添付カテゴリ別に確認したい、という要求は必ず出ます。

4. 保存方式:直リンク運用は避ける(権限事故が起きやすい)

添付ファイルをURL直叩きで見れる状態にすると、URL流出や権限ミスが起きやすいです。
現実的には次の方針が安全側です。

権限設計の基本は 権限・ログ に揃えます。
社内だけ見れる添付と、顧客に共有できる添付は、同じ保存先に置かないほうが事故が減ります。

5. ウイルス/危険ファイル対策:設計で“受けない”が強い

理想はウイルススキャンですが、構築・運用コストもかかります。
まず現実的に効くのは「危険ファイルを受けない」設計です。

もし外部共有があるなら、公開範囲と再送設計(外部連携の冪等性)と同じくらい慎重に扱うべき領域です。

6. 運用:保管期限・削除ルールを先に決める

添付は、溜めるほどリスクとコストが増えます。
次の観点で「残す/消す」を決めておくと、運用が詰まりにくいです。

ステータス運用(運用ルール)と揃えると、「完了=期限カウント開始」が作りやすいです。

業種別の典型

建設・工務店(図面・現場写真)

図面と現場写真はセットです。業務像は 建設・工務店向け を前提に、
現調予約(図面・写真の事前回収)まで含めて、添付が“後戻り防止”の役割を持つように設計します。

自動車販売・整備・タイヤショップ(車両写真・見積根拠)

車両状態、損傷、装着状態、タイヤサイズ表記など、写真が効きます。
業務像は 自動車販売・整備・タイヤショップ向け を前提に、
入庫予約(入庫設計)や適合確認(持込取付の予約)で、写真が“確認コスト”を下げる形にすると現場が楽になります。

インテンスとしても、添付は「付けられる」より「事故らない・探せる・共有できる」を優先して設計します。

まとめ

ファイル添付は、便利な分だけ事故ポイントが増える機能です。
形式/容量を絞り、添付に意味付けを持たせ、直リンクを避けて権限と期限を固める。
この順に設計すると、添付は“現場の武器”として運用に乗りやすくなります。

本記事は、Webシステム開発・スマホ自動変換「movo」・業務システム構築・フォームUX改善・EC支援を提供する 株式会社インテンスが、実際の開発プロジェクトで蓄積した知見をもとにまとめています。 株式会社インテンス(公式サイト)