条件分岐フォームの設計|質問を増やさずに要件を取り切る“聞き方”の型

見積フォームや予約フォームが長くなる理由は、「全員に全部聞いている」からです。
業種や条件によって必要な項目は変わるのに、固定フォームにすると、不要な質問が増え、離脱が増えます。
条件分岐(出し分け)は、入力を減らす強力な手段ですが、作り方を間違えると「迷子」「入力漏れ」「集計不能」で破綻します。
この記事では、条件分岐を“運用に耐える形”で設計するための型を整理します。

この記事で扱う論点
・分岐の作り方(起点となる質問の置き方)
・必須判定(分岐によって必須が変わる問題)
・集計・検索(後で分析できる形に落とす)
・分岐が多すぎて迷子になるのを防ぐUI/文言

1. 分岐の起点は「分類」ではなく「業務が変わる条件」に置く

分岐の起点を「業種」「用途」だけに置くと、現場の業務差分を取り切れません。
起点にするのは、後工程が変わる条件です。例えば次のようなものです。

見積項目の考え方は 業界別テンプレ や、入力ステップ分割(UX設計)と相性が良いです。
まずは分岐を3〜5系統に抑え、後から拡張します。

2. 分岐は深くしない:2段階で止めると運用が崩れにくい

分岐が3段・4段と深くなると、入力者も作る側も把握できなくなります。
実務では「大分類→差分の追い質問」くらいで止めるのが安全です。

分岐の深さ(推奨)
①起点(業務が変わる条件)→ ②差分項目の出し分け(必要な追い質問)
※どうしても深くなるなら、STEP分割して見通しを作る(フォーム構造

スマホでは分岐が深いほど戻り操作が増え、離脱が増えます。
スマホUIの基本(入力最適化パターン)に沿って、選択肢は短く、説明は補助テキストで足します。

3. 必須判定:分岐で必須が変わるなら「確定時にまとめてチェック」も有効

条件分岐の難所は、必須項目が分岐によって変わることです。
ここで“即時に厳密チェック”をやりすぎると、保存できずに離脱します。
実務で回りやすいのは、以下の2段階です。

必須/任意の基準は 基準設計 に立ち返り、
「後工程で詰まる項目」だけを必須にするのが、分岐を増やさないコツです。

4. 集計・検索:分岐の値は“後で使える形”に正規化する

出し分けが成功しても、集計できないと改善につながりません。
少なくとも「起点の選択」は固定値として保存し、タグ(タグ設計)やカテゴリ(カテゴリ最適化)に落とします。

集計の出口は、問い合わせレポート(作り方)や、申込データの事前集計(項目設計)を想定して決めると、後戻りが減ります。

業種別の例(どこで分岐を使うか)

物流(見積)

路線便・チャーター・3PLで必要項目が別物です。具体例は 物流の見積フォーム路線便/チャーター/3PLの差分 と整合させ、
起点を「輸送形態」に置くと聞き漏れが減ります。

自動車販売・整備・タイヤショップ(入庫/予約)

「点検」「一般修理」「保険修理」で、代車・保険会社・部品手配の前提回収が変わります。
業務像は 自動車販売・整備・タイヤショップ向け を前提に、
起点を「作業種別」に置き、差分として「代車の要否」「保険修理の有無」「持込部品の有無」を出し分けるのが実務的です(入庫管理の予約設計 も参考になります)。

まとめ

条件分岐は、フォームを短くするためではなく「不要な質問をしない」ための設計です。
起点は業務が変わる条件に置き、分岐は2段階で止め、必須判定は確定時にまとめる設計も検討する。
さらに、起点の値を固定して保存し、集計の出口まで決めると、運用に耐える分岐フォームになります。

本記事は、Webシステム開発・スマホ自動変換「movo」・業務システム構築・フォームUX改善・EC支援を提供する 株式会社インテンスが、実際の開発プロジェクトで蓄積した知見をもとにまとめています。 株式会社インテンス(公式サイト)