SaaSとカスタムWebシステムの違いと選び方

SaaSとカスタムWebシステムのイメージ

「SaaSで足りるのか、カスタムで作るべきか」「クラウドとオンプレ、どちらが自社向きか」――
こうしたご相談が増えているため、SaaS(クラウドサービス)とカスタムWebシステムの違いクラウド型とオンプレ型の考え方を整理しました。
各業種ごとのより具体的なイメージについては、業種別Webシステム開発例の一覧もあわせてご覧ください。

※ここでは専門的なインフラ設計の話ではなく、現場のご担当者が「ざっくりと選び方を整理する」ための視点に絞って説明しています。
※SaaS型サービスをOEMとして提供している事業者様からのご相談にも対応可能です。

SaaS(クラウドサービス)とカスタムWebシステムの違い

まずは「SaaS(既製品)」と「カスタムWebシステム(自社仕様で作る仕組み)」の違いを、現場でよく話題になる観点で比較します。 ここでのSaaSには、クラウドサービスそのものに加え、他社ブランド向けにOEM提供されているサービスも含めて考えています。 各業種ごとのより具体的な利用イメージは、業種別Webシステム開発例からも確認いただけます。

主な違いのイメージ
観点 SaaS(クラウドサービス) カスタムWebシステム(自社仕様開発)
導入スピード アカウント発行後すぐ使えるものが多く、「試してみる」段階までは非常に早い。 要件整理・設計・開発のステップが必要なため、立ち上がりはSaaSより遅い。
初期費用 初期費は比較的低め。月額課金で始められるケースが多い。 初期費用はSaaSよりかかることが多いが、長期利用・自社特化に向く。
カスタマイズ性 基本は「用意された機能の中で使い方を合わせる」前提。細かい業務の癖までは合わせづらい。 自社の業務フローに合わせて画面・項目・権限などを設計できる。
業務とのフィット感 業界標準のワークフローに近いほどフィットしやすいが、例外処理が増えると運用でカバーしがち。 「自社の例外パターン」まで含めて設計できるため、属人化の解消につながりやすい。
他システムとの連携 APIが公開されていれば連携しやすいが、仕様や制約はサービス側に依存する。OEM提供元との契約条件に影響される場合もある。 既存の基幹システム・SaaS・OEM提供中サービス・CSV連携など、連携側の仕様に合わせて柔軟に設計できる。
解約・乗り換え 解約はしやすいが、データの持ち出し方・移行方法はサービスごとに異なる。 自社で仕様を把握しているため、将来の移行・再構築のコントロールがしやすい。
結論:「まず試したい」「業務を大きく変えない範囲で標準的な機能を使いたい」場合はSaaSが向きます。
一方で、業務のクセが強い/部門ごとに紙やエクセルで回しているフローが多い場合は、SaaSだけでは足りず、周辺をカスタムで補うケースが増えています。
もう少し踏み込んだイメージは、製造業・卸売・医療・学校などの業種別Webシステム開発例も参考になります。
クラウドとオンプレミスをイメージした抽象画像

クラウド型とオンプレミス型の違い(ざっくり整理)

次に、「クラウドにするか、自社サーバ(オンプレミス)にするか」という話題について、よく聞かれるポイントを整理します。

クラウド型(AWS・GCP・さくらのクラウド 等)

  • 初期投資が少なく、利用規模に応じてリソースを増減しやすい。
  • ハードウェア保守や障害対応はクラウド事業者側が担う。
  • インターネット越しにアクセスするため、ネットワーク設計とセキュリティ設計が重要。
  • バックアップ・冗長化などの選択肢が多く、中長期的な拡張性が高い。

オンプレミス型(自社サーバ/自社データセンター)

  • 社内ネットワーク内に閉じた構成も取りやすく、ポリシー上クラウドを使いづらい業種で選ばれやすい。
  • ハードウェアの更新や障害対応を自社または保守ベンダーで行う必要がある。
  • 一度サーバを整えると、月々のランニングは比較的読みやすい。
  • 物理的な制約があるため、急激なアクセス増加への対応は計画的な検討が必要。
実務的には:クラウドの利用が難しい明確な理由(法令・社内規定・取引先条件など)がなければ、中小〜中堅規模の案件ではクラウドを選ぶケースが増えています。
当社でも、「まずはクラウド前提で検討し、必要に応じてオンプレ案も用意する」進め方が一般的です。

ケース別に見る「SaaSで足りる場合」と「カスタムが向く場合」

実際のご相談では、「全部カスタムか、全部SaaSか」という二択ではなく、業務ごとに向き・不向きが分かれることがほとんどです。 例えば製造業・卸売・医療・学校・ホテル・不動産など、業種別ページで紹介している仕組みも、「SaaS+カスタム」の組み合わせで設計されています。

SaaSが向きやすいケース

  • 勤怠管理・経費精算・グループウェアなど、業務プロセスが業界問わず共通化しやすい分野。
  • メール配信・MAツール・チャットなど、「他社と同じ機能」で十分な分野。
  • 社内のITリソースが限られており、「早く動かす」ことを最優先したい段階。

カテゴリ別の代表的なSaaS例(抜粋)

  • ビジネスチャット:Slack、Microsoft Teams、LINE WORKS など
  • Web会議:Zoom、Google Meet、Microsoft Teams など
  • タスク・プロジェクト管理:Asana、Trello、Backlog など
  • オンラインストレージ:Dropbox、OneDrive、Box など
  • SFA・CRM:Salesforce、Dynamics 365、kintone など
  • 会計・バックオフィス:マネーフォワード、freee など
  • 勤怠管理:ジョブカン、KING OF TIME など

カスタムWebシステムが向きやすいケース

  • 製造・物流・医療・建設など、業界固有のフローや例外処理が多い業務。
  • 紙・FAX・電話・エクセルで回っている“社内独自の段取り”を、Web上で整理していきたい場合。
  • 自社の顧客や取引先に合わせた画面構成(マイページ、案件一覧など)が必要な場合。
  • 既存の基幹システムやSaaSと、「こういう形でつなぎたい」という要望が具体的にある場合。

例えば、製造業・各種メーカー向けには 製造業向けWebシステム活用アイデアのように、 製品カタログ・用途検索・技術資料ダウンロードを組み合わせたパターンが有効なケースが多くあります。

「SaaS+カスタム」で、足りない部分だけを補う考え方

当社にご相談いただく中で、最も現実的でコストバランスが良いと感じるのが、「SaaSでまかなえる部分はSaaSを使い、足りない“周辺部分”だけをカスタムで作る」という構成です。 既にOEM提供されているSaaSを中核に据え、その前後を自社専用画面で補う、といったご相談もあります。

よくある組み合わせ例(製造業・卸売)

  • 在庫・販売管理は既存の基幹システムやSaaSのまま。
  • その手前に「製品カタログ・用途検索・技術資料ダウンロード」のWebシステムをカスタムで構築。
  • Web側からの問い合わせ・見積依頼を、CSVやAPIで基幹側に連携。

※全体像のイメージは製造業・工業・各種メーカー向けWebサイト・システム活用例卸売・商社向けの活用例でも紹介しています。

よくある組み合わせ例(学校・医療・介護)

  • 予約・カルテ・学生情報などは既存システムやSaaSを継続利用。
  • その周辺に「説明会・見学会申込」「資料請求」「事前問診」などのWeb窓口をカスタムで整備。
  • 担当部署ごとに必要な情報だけを見やすくまとめた“簡易ダッシュボード”を用意。

※関連する活用例として、学校・大学・専門学校向けや 「医療機関・介護施設向け」の業種別ページもご参照いただけます。

このように、全部を作り替えるのではなく、「既にある仕組み」を前提に足りない部分だけを補うことで、 リスクとコストを抑えつつ現場の負担を下げていくことができます。

  • SaaSの手前の「受付窓口」だけカスタム
  • 社内・取引先向けのマイページだけカスタム
  • 紙/FAX/電話での受付をWebに集約
  • 既存システムやOEM提供サービスの情報を「見える化」する画面だけ作る
PCを使ったシステム運用・開発のイメージ

導入までの進め方(例)

「SaaSかカスタムか」「クラウドかオンプレか」が決まっていない段階でも、次のようなステップで一緒に整理していくことができます。

  1. STEP 1

    現在の業務フロー・既存システム・SaaS利用状況をヒアリングし、「何に一番困っているか」「どの部分から手をつけると効果が出やすいか」を整理します。

  2. STEP 2

    「SaaSでまかなえそうな部分」と「カスタムが必要な部分」をラフに仕分けし、想定されるパターンをご提案します。(フルSaaS案/ハイブリッド案/カスタム中心案など)

  3. STEP 3

    優先度の高い領域から、小さめのスコープで試せる形(PoC/MVP)を検討し、画面イメージと概算費用・スケジュールをお出しします。

  4. STEP 4

    ご承認いただいた内容をもとに、詳細設計・開発・テストを進めます。既存システムやSaaSとの連携部分は、実データを使った検証を行いながら調整します。

  5. STEP 5

    本番反映後、一定期間は運用の様子を見ながら、「項目の微調整」「権限の見直し」などを行い、現場の運用にフィットさせていきます。

具体的な画面構成や活用イメージは、業種別Webシステム開発例に掲載している 製造業・医療・学校・ホテル・不動産などのページも参考になります。

SaaSとカスタムWebシステムの「ちょうど良い組み合わせ」を検討したい方へ

「まずはSaaSを前提に考えたい」「既に使っているクラウドサービスやOEM提供中サービスの周辺だけ整えたい」といった段階でも、お気軽にご相談ください。
業種別の事例や、既存システムとの連携イメージを踏まえて、現実的な構成案をご提案します。

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