SaaSを入れてもExcelが消えない理由

SaaS導入と現場運用をイメージした画像

SaaSを導入した後も、Excelの台帳や共有フォルダを使い続けている会社は珍しくありません。
システムへの入力とExcelへの記録が並行し、「導入前と作業量が変わらない」と感じることもあります。

原因をExcelや利用者の意識だけに求めても、状況は改善しません。
標準機能では扱えない情報、社内報告に必要な集計、例外案件の処理、社外との共有など、Excelが補っている業務が残っているためです。

このページでは、SaaS導入後もExcelが使われる主な理由を6つに分け、確認すべき点と見直しの進め方を解説します。

※ここでは製品やインフラの比較ではなく、SaaS導入後の業務運用を確認する方法に焦点を当てています。
※社外利用者にもログインを求めるかどうかは、マイページ機能は付けるべき?ログイン必須にする前に考えることで解説しています。

10分で現在の使い方を確認する

最初に、現在使われているExcelが何のために必要なのかを確認します。
すべての台帳を詳しく調べる前に、利用頻度の高いものを3つ選ぶだけでも、SaaSで不足している機能や運用上の問題が見えてきます。

  1. STEP 1

    現在も日常的に使っているExcelを3つ挙げます(例:案件台帳、進捗表、見積一覧)。

  2. STEP 2

    それぞれが担っている役割を、後述する6つの理由に当てはめます。複数の理由に該当する場合は、すべて記録します。

  3. STEP 3

    利用頻度、作業時間、入力ミスへの影響を確認し、優先度の高いものから2つまでを見直しの対象にします。

ポイント: Excelの廃止を目標にするのではなく、その台帳が現在どの業務を補っているのかを確認することが重要です。

Excelが残ること自体は導入失敗ではありません

Excelが使われているという事実だけでは、SaaSの導入が失敗したとは判断できません。
項目をすぐに追加できる、並べ替えや集計がしやすい、社内外へ渡しやすいなど、Excelが適している用途もあります。

確認すべき点:問題になるのはExcelの利用そのものではなく、SaaSとExcelのどちらが最新情報なのか分からない状態や、同じ情報を二重に更新している状態です。
Excelが担っている役割を確認すると、機能追加が必要なのか、運用ルールを変更すべきなのかを判断できます。

Excelを減らす場合も、使用禁止を先に決めるのではなく、
現在の台帳が担っている機能を、どの仕組みに移すのかを明確にする必要があります。

SaaS導入 標準機能を使い始める 業務への適用はここから 運用条件を決める 権限、入力ルール、周知、 例外対応の扱いを決める 不足する業務が判明 二重入力、例外処理、 部門間の共有、加工が発生 補助用の台帳を作成 不足する情報や処理を別管理で補う 集計・配布・承認の都合で増えやすい 例)Excel / 共有フォルダ / 個人メモ / メール共有 本体の改善が後回し 日常業務は継続できるため、 台帳がそのまま定着しやすい 結果: SaaSとExcelの二重管理が定着する
図:SaaSの標準機能で扱えない情報や処理をExcelで補うと、日常業務は続けられます。一方で、改善が先送りされると二重管理が定着します。見直す際は、Excelが補っている業務を特定し、SaaS側の設定変更、機能追加、連携、運用変更のどれで対応するかを決めます。

Excelが残る主な理由(6パターン)

Excelが使われる理由は一つとは限らず、二重入力と報告資料の作成など、複数の問題が同時に起きていることがあります。
現在の運用に該当する項目を確認し、Excelが担っている役割を把握します。

1)同じ情報を二重に入力している

  • SaaSとExcelの両方へ同じ内容を入力している
  • SaaSに業務上必要な入力項目がない
  • Excelだけに最新情報が記録されることがある

確認すること:正本となるシステムを決め、もう一方への入力が必要な場合は、CSV出力やAPIなどによる連携を検討します。

2)例外案件をSaaSで扱えない

  • 標準の処理手順に当てはまらない案件がある
  • 例外案件だけを別の台帳で管理している
  • 例外の件数が増え、SaaS上の情報だけでは状況を把握できない

確認すること:例外の種類と発生件数を調べ、SaaSの設定で対応するか、例外受付用の画面や一覧を追加するかを判断します。

3)必要な人が情報を確認できない

  • 閲覧したい人にSaaSのアカウントや権限がない
  • 担当部署ごとに必要な項目や表示順が異なる
  • 共有用の一覧としてExcelを作成している

確認すること:閲覧者、必要項目、更新頻度を確認し、閲覧専用権限や部署別の一覧画面、定期出力のいずれが適切かを検討します。

4)報告用の集計や加工が必要

  • 会議、上長への報告、取引先への提出ごとに形式が異なる
  • 集計条件や表示項目を毎回変更している
  • SaaSの画面より、加工済みのExcelが参照されている

確認すること:定期的に作成している資料を整理し、一覧画面、集計レポート、CSV、PDFなどで定型出力できるかを検討します。

5)承認記録や証跡を別に保存している

  • 稟議、押印、監査に必要な記録がSaaS内に残らない
  • 承認時の添付資料としてExcelを作成している
  • SaaSとExcelのどちらが確定情報か分かりにくい

確認すること:承認結果、変更履歴、添付資料の保存先を決め、確定後の情報を一か所で確認できるようにします。

6)取引先や現場がSaaSを利用できない

  • 利用者が多く、アカウントの発行・停止に時間がかかる
  • 社外利用者にログイン操作を求めにくい
  • メール添付や共有ファイルで情報を受け渡している

確認すること:社外利用者には期限付きURLや提出フォームを用意し、閲覧範囲、有効期限、本人確認の方法を用途に応じて設定します。

確認の基準:Excelの使用を止める前に、その台帳が入力、例外処理、閲覧、集計、承認、社外共有のどれを補っているのかを確認します。
必要な対応は、SaaSの設定変更、追加開発、データ連携、運用ルールの変更によって異なります。
部署間の情報共有や運用をイメージした画像

原因を3つの観点で確認する

個別のExcelだけを確認すると、台帳ごとに異なる問題があるように見えます。
原因を「機能・データ」「運用ルール」「利用者・組織」の3つに分けると、複数の台帳に共通する問題を把握できます。

Excelが残る原因を確認する3つの観点
分類 典型例 見直しの方向
機能・データ設計 必要な項目がない、例外処理に対応できない、必要な形式で出力できない SaaSの設定変更、追加画面、データ連携、定型出力を検討する
運用ルール 正本、入力担当、更新期限、確認方法、問い合わせ窓口が決まっていない 責任者と手順を決め、利用者へ周知し、定期的に運用を確認する
利用者・組織 社外、現場、協力会社、複数部署など、利用条件の異なる人が関わる 権限、閲覧専用画面、期限付きURL、提出フォームなどを使い分ける

特に見落とされやすいのが、利用者ごとの条件です。
社内の閲覧者、入力担当者、承認者、社外の取引先では、必要な機能も適切なアクセス方法も異なります。全員に同じ画面とログイン方法を適用すると、別の共有手段が残る原因になります。

Excelを減らす前に決めること

Excelの利用を先に禁止すると、例外処理や報告資料の作成ができなくなり、個人メモや別の共有ファイルへ置き換わる可能性があります。
まずExcelが担っている役割を移し、その後で二重管理を終了する順序が適切です。
次の4段階で確認します。

STEP 1:正本となる情報を決める

SaaSとExcelのどちらを最新情報として扱うのかを決めます。
正本が明確でないと、更新漏れや数値の不一致が発生した際に、どちらを修正すべきか判断できません。

STEP 2:Excelが担っている役割を確認する

入力、例外処理、閲覧、集計、承認、社外共有のうち、
Excelがどの業務で使われているのかを台帳ごとに確認します。

STEP 3:不足する機能や連携方法を決める

SaaSを入れ替える前に、設定変更や周辺機能の追加で対応できるかを確認します。
一覧、検索、履歴、ステータス表示、CSV・PDF出力、受付画面、API連携などが候補になります。

STEP 4:移行条件とExcelの終了時期を決める

権限、入力担当、更新期限、問い合わせ窓口、既存データの移行方法を決めます。
新しい運用で必要な業務を行えることを確認してから、対象となるExcelの更新を終了します。

補足:利用者を増やすためにアカウントを追加すると、発行・停止、権限変更、パスワード再設定などの管理も必要になります。
ログインを必要とする範囲の判断は、マイページ機能は付けるべき?ログイン必須にする前に考えることで解説しています。

判断チェックリスト

現在の運用に次の項目が当てはまるかを確認します。
該当項目が多い場合は、Excelの廃止より先に、機能・運用・利用者のどこに問題があるかを確認する必要があります。

Excelが残りやすいサイン
チェック Yesの場合に起きやすいこと
入力が二重になっている SaaSとExcelの数値が一致せず、最新情報を判断できなくなる
例外が多い/増え続ける 標準案件と例外案件が別管理になり、案件全体を一覧で確認できなくなる
会議・報告の加工が毎回必要 加工後のExcelが実質的な報告資料となり、SaaS上の情報が参照されなくなる
社外が関わる 取引先や現場との受け渡しに、メール添付や共有ファイルが必要になる
権限や責任範囲が曖昧 更新担当が不明確になり、確認用の台帳や個人メモが増える
結論:Excelの使用禁止だけでは、二重管理は解消できません。
正本、例外処理、出力、承認、社外共有の方法を決め、Excelが担っている役割を別の仕組みに移してから更新を終了します。

ご相談時に確認・ご提案できる内容

1)現在使用しているExcelの確認

現在使用している台帳と用途を確認し、入力、例外処理、閲覧、集計、承認、社外共有のどの役割を担っているかを分類します。

2)既存SaaSを活用した改善案

既存SaaSの設定変更、周辺画面の追加、CSV・API連携などから、改修範囲の異なる構成案を原則2案程度ご提示します。

3)費用・期間・運用方法の目安

各案について、想定する機能、概算費用、開発期間、導入後に必要となる管理作業を確認できる形でまとめます。

補足: SaaS全体を入れ替えず、二重入力や報告資料の作成など、負担の大きい業務だけを対象とすることも可能です。

SaaS導入後のExcel管理を見直したい方へ

「既存のSaaSは継続したい」「二重入力だけを解消したい」「報告用の一覧画面を追加したい」など、検討内容が固まっていない段階でもご相談いただけます。
現在のExcelと業務手順を確認し、SaaSの設定変更、周辺機能の追加、データ連携などから適切な方法をご提案します。

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