SaaSとExcelの二重管理を解消するには|原因の確認と改善手順

SaaSとExcelの二重管理を一本化する方法を検討するイラスト

Excelを使っていること自体が問題なのではありません。SaaSを正本にし、Excelを一時的な分析や提出形式にだけ使うなら、役割分担は明確です。見直すべきなのは、同じ情報を両方へ入力し、どちらが最新か分からない状態です。
二重管理は、利用者の意識よりも、SaaSで扱えない例外、必要な出力、承認記録、社外共有の方法が決まっていないときに発生します。このページでは原因を6つに分け、Excelを残す範囲、やめる範囲、設定変更・連携・追加開発の選び方を説明します。

先に結論:Excelの役割を3つに分けます

残してよい

SaaSから出力し、分析・試算・提出資料として一時的に使う。更新元はSaaSのみ。

見直しが必要

同じ項目を双方へ入力し、更新日時や数値が一致しない。担当者ごとに別ファイルがある。

追加機能を検討

例外、集計、承認、社外共有のためにExcelが業務システムの代わりになっている。

※特定のSaaSやExcelの利用を否定する記事ではありません。二重入力と情報の不一致を減らすための確認手順を扱います。

最初に確認する3項目

最初に、現在使われているExcelが何のために必要なのかを確認します。
すべての台帳を詳しく調べる前に、利用頻度の高いものを3つ選ぶだけでも、SaaSで不足している機能や運用上の問題が見えてきます。

  1. STEP 1
    よく使うExcelを3つ挙げる

    現在も日常的に使っているExcelを3つ挙げます(例:案件台帳、進捗表、見積一覧)。

  2. STEP 2
    Excelが担う役割を確認する

    それぞれが担っている役割を、後述する6つの理由に当てはめます。複数の理由に該当する場合は、すべて記録します。

  3. STEP 3
    優先して見直すものを選ぶ

    利用頻度、作業時間、入力ミスへの影響を確認し、優先度の高いものから2つまでを見直しの対象にします。

ポイント: Excelの廃止を目標にするのではなく、その台帳が現在どの業務を補っているのかを確認することが重要です。

Excelを残してよいケース・見直すケース

Excelが使われているという事実だけでは、SaaSの導入が失敗したとは判断できません。
項目をすぐに追加できる、並べ替えや集計ができる、社内外へファイルで渡せるなど、Excelが適している用途もあります。

確認すべき点:問題になるのはExcelの利用そのものではなく、SaaSとExcelのどちらが最新情報なのか分からない状態や、同じ情報を二重に更新している状態です。
Excelが担っている役割を確認すると、機能追加が必要なのか、運用ルールを変更すべきなのかを判断できます。

Excelを減らす場合も、使用禁止を先に決めるのではなく、
現在の台帳が担っている機能を、どの仕組みに移すのかを明確にする必要があります。

SaaS導入 標準機能を使い始める 業務への適用はここから 運用条件を決める 権限、入力ルール、周知、 例外対応の扱いを決める 不足する業務が判明 二重入力、例外処理、 部門間の共有、加工が発生 補助用の台帳を作成 不足する情報や処理を別管理で補う 集計・配布・承認の都合で増えやすい 例)Excel / 共有フォルダ / 個人メモ / メール共有 本体の改善が後回し 日常業務は継続できるため、 台帳がそのまま継続利用される 結果: SaaSとExcelの二重管理が定着する
図:SaaSの標準機能で扱えない情報や処理をExcelで補うと、日常業務は続けられます。一方で、改善が先送りされると二重管理が定着します。見直す際は、Excelが補っている業務を特定し、SaaS側の設定変更、機能追加、連携、運用変更のどれで対応するかを決めます。

二重管理が起きる6つの原因

Excelが使われる理由は一つとは限らず、二重入力と報告資料の作成など、複数の問題が同時に起きていることがあります。
現在の運用に該当する項目を確認し、Excelが担っている役割を把握します。

1)同じ情報を二重に入力している

  • SaaSとExcelの両方へ同じ内容を入力している
  • SaaSに業務上必要な入力項目がない
  • Excelだけに最新情報が記録されることがある

確認すること:正本となるシステムを決め、もう一方への入力が必要な場合は、CSV出力やAPIなどによる連携を検討します。

2)例外案件をSaaSで扱えない

  • 標準の処理手順に当てはまらない案件がある
  • 例外案件だけを別の台帳で管理している
  • 例外の件数が増え、SaaS上の情報だけでは状況を把握できない

確認すること:例外の種類と発生件数を調べ、SaaSの設定で対応するか、例外受付用の画面や一覧を追加するかを判断します。

3)必要な人が情報を確認できない

  • 閲覧したい人にSaaSのアカウントや権限がない
  • 担当部署ごとに必要な項目や表示順が異なる
  • 共有用の一覧としてExcelを作成している

確認すること:閲覧者、必要項目、更新頻度を確認し、閲覧専用権限や部署別の一覧画面、定期出力のいずれが適切かを検討します。

4)報告用の集計や加工が必要

  • 会議、上長への報告、取引先への提出ごとに形式が異なる
  • 集計条件や表示項目を毎回変更している
  • SaaSの画面より、加工済みのExcelが参照されている

確認すること:定期的に作成している資料を整理し、一覧画面、集計レポート、CSV、PDFなどで定型出力できるかを検討します。

5)承認記録や証跡を別に保存している

  • 稟議、押印、監査に必要な記録がSaaS内に残らない
  • 承認時の添付資料としてExcelを作成している
  • SaaSとExcelのどちらが確定情報か分かりにくい

確認すること:承認結果、変更履歴、添付資料の保存先を決め、確定後の情報を一か所で確認できるようにします。

6)取引先や現場がSaaSを利用できない

  • 利用者が多く、アカウントの発行・停止に時間がかかる
  • 社外利用者にログイン操作を求めにくい
  • メール添付や共有ファイルで受け渡しており、既存SaaSの外部共有・ゲスト権限・提出フォームを使えるか確認していない

確認すること:まず既存SaaSの外部共有・ゲスト権限・提出フォームで対応できるかを確認します。足りない場合は、期限付きURLや専用の提出フォームを含め、閲覧範囲、有効期限、本人確認の方法を用途に応じて比較します。

確認の基準:Excelの使用を止める前に、その台帳が入力、例外処理、閲覧、集計、承認、社外共有のどれを補っているのかを確認します。
必要な対応は、SaaSの設定変更、追加開発、データ連携、運用ルールの変更によって異なります。
部署ごとに残ったExcel台帳の役割を確認するイラスト

原因を3つの観点で確認する

台帳ごとに個別対応を始める前に、原因を「機能・データ」「運用ルール」「利用者・組織」の3つへ分けます。同じ原因から複数のExcelが作られている場合、共通の対応を検討できます。

Excelが残る原因を確認する3つの観点
分類 典型例 見直しの方向
機能・データ設計 必要な項目がない、例外処理に対応できない、必要な形式で出力できない SaaSの設定変更、追加画面、データ連携、定型出力を検討する
運用ルール 正本、入力担当、更新期限、確認方法、問い合わせ窓口が決まっていない 責任者と手順を決め、利用者へ周知し、定期的に運用を確認する
利用者・組織 社外、現場、協力会社、複数部署など、利用条件の異なる人が関わる 権限、閲覧専用画面、期限付きURL、提出フォームなどを使い分ける
データ管理状況要確認 3件
18確認対象
7正本決定済み
6二重入力
5出力のみ
案件の進捗正本:SaaSExcelも更新毎日
月次報告正本:SaaS出力・加工のみ月1回
例外案件正本:未決定別台帳12件

画面例:台帳名ではなく、扱う情報ごとに正本、更新者、利用頻度、Excelの用途を並べると、設定変更で済む項目と追加機能が必要な項目を分けられます。

特に見落とされやすいのが、利用者ごとの条件です。
社内の閲覧者、入力担当者、承認者、社外の取引先では、必要な機能も適切なアクセス方法も異なります。全員に同じ画面とログイン方法を適用すると、別の共有手段が残る原因になります。

Excelを減らす前に決めること

Excelの利用を先に禁止すると、例外処理や報告資料の作成ができなくなり、個人メモや別の共有ファイルへ置き換わる可能性があります。
まずExcelが担っている役割の移行先を決め、業務を続けられることを確かめてから二重更新を終了します。

STEP 1:正本となる情報を決める

SaaSとExcelのどちらを最新情報として扱うのかを決めます。
正本が明確でないと、更新漏れや数値の不一致が発生した際に、どちらを修正すべきか判断できません。

STEP 2:Excelが担っている役割を確認する

入力、例外処理、閲覧、集計、承認、社外共有のうち、
Excelがどの業務で使われているのかを台帳ごとに確認します。

STEP 3:不足する機能や連携方法を決める

SaaSを入れ替える前に、設定変更や周辺機能の追加で対応できるかを確認します。
一覧、検索、履歴、ステータス表示、CSV・PDF出力、受付画面、API連携などが候補になります。

STEP 4:移行条件とExcelの終了時期を決める

権限、入力担当、更新期限、問い合わせ窓口、既存データの移行方法を決めます。
新しい運用で必要な業務を行えることを確認してから、対象となるExcelの更新を終了します。

補足:利用者を増やすためにアカウントを追加すると、発行・停止、権限変更、パスワード再設定などの管理も必要になります。
ログインを必要とする範囲の判断は、マイページの導入判断とログインなしの代替案で解説しています。

判断チェックリスト

現在の運用に次の項目が当てはまるかを確認します。
該当項目が多い場合は、Excelの廃止より先に、機能・運用・利用者のどこに問題があるかを確認する必要があります。

Excelが残りやすいサイン
チェック Yesの場合に起きやすいこと
入力が二重になっている SaaSとExcelの数値が一致せず、最新情報を判断できなくなる
例外が多い/増え続ける 標準案件と例外案件が別管理になり、案件全体を一覧で確認できなくなる
会議・報告の加工が毎回必要 加工後のExcelが実質的な報告資料となり、SaaS上の情報が参照されなくなる
社外が関わる 受け渡し方法が決まっていないと、メール添付や共有ファイルが増えることがある
権限や責任範囲が曖昧 更新担当が不明確になり、確認用の台帳や個人メモが増える
結論:Excelの使用禁止だけでは、二重管理は解消できません。
正本、例外処理、出力、承認、社外共有の方法を決め、Excelが担っている役割を別の仕組みに移してから更新を終了します。

Excelが担っている業務別の画面例

Excelを別の仕組みへ移すときは、「表をそのままWeb化する」のではなく、その表を使って誰が何を判断しているかを画面にします。次の例では、Excelが担いがちな計算、期限管理、現場記録をそれぞれ別の構成で紹介しています。

計算・承認

見積原価と承認履歴を管理

材料単価、加工時間、粗利条件、回答期限を案件ごとに管理する例です。

見積管理の画面例を見る
期限・証明書

計測器の校正期限を管理

機器台帳、期限、校正依頼、証明書、使用可否を機器単位で確認する例です。

校正管理の画面例を見る
現場・報告書

点検から是正・報告まで管理

受付、現場写真、点検結果、修繕履歴を案件・設備に関連付ける例です。

保守点検の画面例を見る

SaaSとExcelの二重管理についてよくある質問

Excelをすべて廃止する必要がありますか?

ありません。SaaSを正本にし、分析や一時的な提出形式としてExcelを使う方法はあります。問題は同じ項目を両方で更新し、正しい情報を判断できない状態です。

最初にどのExcelから見直せばよいですか?

更新頻度が高い、複数人が触る、入力ミスの影響が大きい、同じデータを再入力している台帳を優先します。利用者が一人で影響が小さい試算表は後回しにできます。

APIがないSaaSでも二重入力をなくせますか?

CSV入出力、定期ファイル連携、受付画面の追加などを検討できます。自動化できない場合も、入力元を一つにし、もう一方は参照・出力だけにすれば、二重更新による不一致を減らせます。出力時点の差や、取り込み漏れ・連携失敗の確認方法も決めます。

SaaSを入れ替えるべきか、追加開発すべきか迷います。

不足が業務全体に及ぶなら入れ替え、例外・一覧・帳票など一部なら設定変更や周辺機能の追加が候補です。データ移行、教育、並行運用の費用も含めて比較します。

ご相談時に確認・ご提案できる内容

1)現在使用しているExcelの確認

現在使用している台帳と用途を確認し、入力、例外処理、閲覧、集計、承認、社外共有のどの役割を担っているかを分類します。

2)既存SaaSを活用した改善案

既存SaaSの設定変更、周辺画面の追加、CSV・API連携などから、改修範囲の異なる構成案を原則2案程度ご提示します。

3)費用・期間・運用方法の目安

各案について、想定する機能、概算費用、開発期間、導入後に必要となる管理作業を確認できる形でまとめます。

補足: SaaS全体を入れ替えず、二重入力や報告資料の作成など、負担の大きい業務だけを対象とすることも可能です。

SaaS導入後のExcel管理を見直したい方へ

「既存のSaaSは継続したい」「二重入力だけを解消したい」「報告用の一覧画面を追加したい」など、検討内容が固まっていない段階でもご相談いただけます。 現在のExcelと業務手順を確認し、SaaSの設定変更、周辺機能の追加、データ連携などから適切な方法をご提案します。

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