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品質クレーム・不具合対応の「見える化」と再発防止

品質保証・クレーム対応では、受付・調査・対策・顧客回答・再発防止までの情報が、メール/Excel/紙の報告書に分かれて残りやすい領域です。
その結果、「最新状況が追えない」「過去案件が検索できない」「会議資料が毎回つくり直し」になり、対応スピードと再発防止の両方に負荷がかかります。
このページでは、不具合・クレーム情報原因・対策・再発防止、さらに顧客・営業への回答状況を、Webシステム上で“案件単位”に整理していく考え方と、画面構成イメージをご紹介します。

品質クレーム・不具合対応の「見える化」と再発防止

こんな品質保証・クレーム対応部門の方に向いています

  • クレームや不具合報告の受付が、メール・電話・紙・チャットなどに散らばっている。
  • 拠点や担当ごとにExcel台帳があり、全体像と優先順位が把握しづらい。
  • 過去の類似案件を探すのに時間がかかり、判断根拠が共有されにくい。
  • 営業や顧客から進捗を聞かれても、最新のステータスと次の連絡予定を即答しにくい。
  • 品質会議の集計・グラフ作成が毎回手作業で、数字合わせに時間が取られている。
  • 海外拠点や委託先とも共有したいが、メール運用では抜け漏れや権限管理が難しい。

このページで扱うシーン →ダッシュボードの画面イメージへ

現場で起きがちな運用上の課題

パターン1: クレーム票・報告書が拠点ごと・担当ごとに分かれている

受付はできていても、台帳が拠点や担当単位で別々に存在し、全体の優先順位や傾向が見えにくい状態です。
「同じ製品で似た不具合が増えている」「特定顧客で再発している」といった兆しがつかみにくく、対策の打ち手が遅れがちになります。

パターン2: 原因・対策・再発防止が資料ごとに分かれて追えない

暫定対策・恒久対策・再発防止の整理自体は行っていても、報告書や会議資料が別々に残ることで、後から経緯がたどりにくくなります。
「最終判断は何だったか」「どの時点で誰が承認したか」を確認するだけで時間が取られ、会議の本題が圧迫されやすくなります。

パターン3: 顧客・営業への共有が遅れ、状況説明が後追いになる

社内では調査が進んでいても、営業や顧客に伝わるのが遅れ、問い合わせのたびに確認が発生する状態です。
顧客側には「今どこまで進んでいるのか」が見えず、連絡頻度が増えたり、対応への不安につながってしまうことがあります。

パターン4: 品質会議・経営報告の集計が毎回ゼロからの作業になる

月次・四半期の会議に向けて、拠点別・製品別・顧客別の件数や傾向を、担当者が都度集計している状態です。
集計に時間がかかるだけでなく、定義の違い(カウント条件や分類)が混ざり、数字合わせの手間が増えやすくなります。

パターン5: 写真・検査データ・添付資料が散らばり、どれが最終版か分からない

重要な資料がメール添付や共有フォルダに点在し、「参照すべきファイル」を探す時間が増えやすい状態です。
版管理(差し替え履歴)が追えないと、顧客説明や監査対応で「この資料はいつのものか」を確認する作業が発生します。

パターン6: 分類(原因区分・不具合区分・影響度)が揃わず、検索と集計が効きにくい

同じ内容でも担当者によって表現や分類が違い、検索に漏れが出たり、会議でのグラフが実感とずれて見えることがあります。
“入力の揺れ”が増えるほど、蓄積が資産になりにくくなります。

パターン7: 是正処置の期限・担当・効果確認が曖昧になり、クローズ基準がぶれやすい

暫定対策は早く進んでも、恒久対策・横展開・教育・効果確認が「いつまでに/誰が/何をもって完了か」曖昧になり、後から追跡が必要になる状態です。
結果として、再発してから「前回の残課題が終わっていなかった」と気づくリスクが残ります。

ダッシュボード(管理画面)構成イメージ集

シーン1

製品クレームの一次受付とチケット管理を標準化したい

入口をWebフォームに揃え、まずは「案件として登録できる状態」にするイメージです。
項目は最初から増やしすぎず、現場が迷わない最低限から始めます。

  • 製品情報(品番・カテゴリ・ロットなど)
  • 発生場所(顧客/拠点/ライン)・発生日
  • 症状(何が起きたか)と一次情報(写真有無など)
  • 影響度(致命/重大/軽微など)
  • 受付チャネル(メール/電話/現場報告など)

受付時にクレーム番号(チケットID)を自動採番し、担当部門・次アクション・期限を持たせます。
一覧でステータス(受付/調査/暫定対策/恒久対策/クローズ)を見られるだけでも、問い合わせ対応の手戻りが減りやすくなります。

画面イメージ:一次受付フォーム+クレーム一覧(フィルタ:製品/顧客/ステータス)

画面構成イメージはPCからご覧ください。

シーン2

原因特定〜対策〜再発防止までを一つの“ストーリー”として管理したい

1件の案件に対して、原因整理から対策、再発防止、横展開までを「同じ画面で追える」状態にするイメージです。
会議資料を探し回るのではなく、案件画面を見れば経緯が分かる形を目指します。

  • 原因整理(人/設備/材料/方法/環境などの観点)
  • 暫定対策(実施日・効果確認・顧客への一次回答)
  • 恒久対策(導入計画・完了日・確認データ)
  • 横展開(対象製品・対象拠点・実施状況)
  • 承認履歴(いつ/誰が/何を承認したか)

「なぜなぜ分析」や「8Dレポート」の考え方を、フォームとして構造化しておくと、検索と集計が効きやすくなります。
後から見返したときに、結論だけでなく“判断の筋道”も追えるようになります。

画面イメージ:クレーム詳細で「原因・対策・再発防止」をまとめて閲覧

画面構成イメージはPCからご覧ください。

シーン3

顧客・営業向けに「いま対応中/完了」を分かりやすく伝えたい

社内の詳細情報とは別に、「見せても問題ない情報だけ」を抽出したビューを用意するイメージです。
顧客・営業への説明が“案件ごとの最新状態”に揃い、メールの往復が減りやすくなります。

  • クレーム番号・顧客名・対象製品・発生日
  • ステータス(受付/調査中/対策実施済/クローズ)
  • 顧客向けコメント(技術詳細は伏せた要約)
  • 次回の連絡予定日・窓口

顧客ごとに閲覧範囲を絞り込めるようにしておくと、「自社の案件だけ」を迷わず確認できます。
将来的に顧客ポータルと組み合わせる場合も、この“公開範囲の切り分け”が土台になります。

画面イメージ:顧客・営業向け状況ビュー(社内情報は一部マスキング)

画面構成イメージはPCからご覧ください。

シーン4

品質会議・経営報告に使うクレーム統計を自動で可視化したい

登録データをもとに、会議で使う切り口を“最初から固定”して集計・表示するダッシュボードのイメージです。
まずは「見たい数字がすぐ出る」ことを優先し、複雑なBI導入は後段でも問題ありません。

  • 期間別の件数推移(影響度別)
  • 製品カテゴリ別・拠点別・顧客別の件数
  • 原因区分(人/設備/材料/方法/環境など)の割合
  • 発生〜暫定対策完了までのリードタイム

「集計とグラフ作成」を毎回ゼロから行わず、画面で確認し、必要な範囲だけを会議資料に貼り付ける運用にすると、作業時間がまとまって減りやすくなります。

画面イメージ:クレーム統計ダッシュボード(推移・原因別・リードタイムなど)

画面構成イメージはPCからご覧ください。

シーン5

海外拠点・製造委託先と不具合情報をセキュアに共有したい

海外工場や委託先とも同じ案件を見ながら、必要な情報だけを安全に共有するためのポータル画面のイメージです。
まずは「その拠点が対応すべき案件だけ」を出し、入力欄も最小限に絞って運用に乗せます。

  • 拠点に関連する案件だけを表示する一覧
  • 顧客名や市場情報など、必要に応じたマスキング
  • 現地側の調査結果・対策案・写真添付の入力
  • 本社側コメント・承認状況・次アクション

SharePoint / Teams / Box などの共有基盤を併用しつつ、案件の「進捗」「責任範囲」「次アクション」をWeb上に揃えると、タイムゾーンをまたぐやり取りでも確認が進めやすくなります。

画面イメージ:海外拠点・製造委託先向け不具合ポータル(自拠点関連のみ表示)

画面構成イメージはPCからご覧ください。

シーン6

写真・検査データ・添付資料を「最終版が分かる形」でまとめたい

案件に紐づく“証拠資料”を、案件画面から迷わず辿れるようにするイメージです。
ファイルの置き場は既存の共有基盤でも構いませんが、Web側で「関連付け」と「版」を揃えておくと、探す時間が減りやすくなります。

  • 現場写真(撮影日・撮影者・対象ロット・撮影場所)
  • 測定データ・検査成績書(測定条件・判定基準・結論の要点)
  • 顧客支給資料(図面・仕様・再現手順など)
  • 差し替え履歴(旧→新、差し替え理由、参照すべき版の指定)
  • 共有範囲(社内/拠点/顧客/委託先)

「最終版がどれか」を明確にし、案件の説明に必要な資料がすぐ揃う状態にしておくと、顧客回答や監査対応がスムーズになります。

画面イメージ:資料・添付の一覧(版管理/共有範囲/差し替え履歴)

画面構成イメージはPCからご覧ください。

シーン7

是正処置(CAPA)を期限・担当・効果確認まで抜けなく回したい

恒久対策・横展開・教育・工程変更など、“やること”が増えるほど、進捗が見えにくくなります。
ここでは、対策をタスクとして切り出し、期限と完了条件、承認、効果確認までをセットで追うイメージです。

  • タスク(内容/担当/期限/対象拠点/対象製品)
  • 承認(品質保証→製造→生産技術など、必要な段階のみ)
  • 完了条件(変更反映、教育完了、検証データ添付など)
  • 期限超過の見える化(一覧の強調、通知)
  • 効果確認(一定期間後の再発有無、確認者、結果)

クローズの基準を“人の記憶”に寄せず、画面で揃えておくと、再発防止が運用として定着しやすくなります。

画面イメージ:CAPAタスクリスト(期限・担当・承認・効果確認)

画面構成イメージはPCからご覧ください。

シーン8

監査・顧客監査に出せる「証跡」として対応履歴を整えたい

監査で求められるのは「結論」だけではなく、「いつ/誰が/何を根拠に判断したか」という過程です。
日々の運用をそのまま証跡として出せる形にしておくと、監査前の資料づくりが軽くなります。

  • 受付〜調査〜対策〜効果確認までのタイムライン
  • 承認履歴(承認者・承認日・差し戻し理由)
  • 添付資料(検査成績書、変更記録、教育記録)への紐付け
  • 監査で聞かれやすい要点(判断根拠、適用規格、横展開)
  • 監査用エクスポート(必要範囲だけのマスキング)

“監査が来てから組み直す”のではなく、普段の入力がそのまま説明に使える状態を作るのが狙いです。

画面イメージ:監査用エクスポート(タイムライン+承認履歴+添付一覧)

画面構成イメージはPCからご覧ください。

Webシステムでどう楽にしていけるか

  1. 1. 受付をWebフォームに揃え、案件(チケット)として登録する

    メールや紙の情報を“案件”に揃えるだけで、検索・集計・状況共有の土台ができます。
    最初は項目を絞り、現場で入力が回る形を優先します。

  2. 2. ステータスと担当を固定し、「いま誰のボールか」を見えるようにする

    調査中/暫定対策/恒久対策/クローズなどの状態を揃え、一覧で追える形にします。
    問い合わせ対応の確認作業が減り、次アクションが明確になります。

  3. 3. 原因・対策・再発防止の入力項目を“型”として揃える

    報告書のフォーマットをそのまま画面に落とし込み、入力の揺れを減らします。
    過去案件との比較がしやすくなり、横展開の速度も上げやすくなります。

  4. 4. 顧客・営業に見せる範囲を分け、共有の手間を減らす

    社内の詳細は残しつつ、顧客向けには要約とステータスを表示するなど、情報の出し分けを設計します。
    「どこまで開示して良いか」を整理しておくと、現場が迷いにくくなります。

  5. 5. 会議で見る切り口を先に決め、ダッシュボードに直結する項目を持たせる

    後から集計しようとして“必要な項目が無い”状態を避けるため、会議で使う軸を先に決めます。
    原因区分・影響度・暫定対策完了日など、集計の要になる項目はマスタとして揃えます。

  6. 6. 添付資料は「版」と「共有範囲」をセットで管理する

    置き場は共有フォルダでも構いませんが、案件画面から参照できるようにし、最終版が分かるようにします。
    顧客説明や監査で、資料確認の手間が増えにくくなります。

  7. 7. CAPAはタスク化し、期限・承認・効果確認までを一続きにする

    対策の“やりっぱなし”を避けるため、完了条件と効果確認を画面上で揃えます。
    期限超過や未完了が一覧で分かるだけでも、追跡が大きく楽になります。

小さく始めるならどこからか

品質保証の領域は関係者が多く、最初から全部を整えようとすると止まりやすくなります。
初期は、次の2点に絞って“回る形”を先に作るのがおすすめです。

  • 受付フォーム+クレーム一覧(簡易ステータス・担当・期限)を整える。
  • 代表案件から、原因・対策・再発防止の入力を画面で残し始める。

ここまででも、案件の検索性と状況共有は大きく改善しやすくなります。
その後、顧客向けビュー、統計ダッシュボード、添付の版管理、海外拠点ポータル、CAPA管理などを、運用を見ながら段階的に足していく形が現実的です。

ご相談いただくときのポイント

ご相談時には、次のような情報があると整理がスムーズです。

  • 現在お使いのクレーム票・不具合報告書・Excel台帳のサンプル(項目が分かる範囲で構いません)。
  • まず改善したい対象(顧客クレーム/社内不具合/海外拠点/委託先など)の優先順位。
  • 関係者(品質保証/製造/生産技術/営業/海外拠点など)と、共有範囲のイメージ。

いまの運用をいきなり全面変更する前提ではなく、「現行の帳票やExcelを起点に、どこをWebで支えると効きそうか」を一緒に整理する進め方です。
製造業全体としての活用イメージは、 製造業向けWebシステム活用アイデア にまとめていますので、あわせてご覧いただければと思います。

品質保証・クレーム対応業務でのWeb活用について相談したい方へ

「いま使っているクレーム票や運用のままでも整理できますか?」といった段階からでも、お気軽にご相談ください。

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